「未来を創るのは子どもたちです」 児童養護施設を支援する会

インタビュー/特別寄稿

2018/03/05

こどもの未来をつくる団体・・・・

宮城県東松島市にて活動をしている「児童養護施設支援の会」。
「親と離れて暮らす子どもたち、行き場をなくした子どもたち、傷を負った子どもたちや悩んでいる子どもたち―子どもたちが生き生きと暮し、明るい未来を築けるよう支援をします」
2008年に発足し宮城県と埼玉県に事務所を構え、「人助けは仕事ではなく自然発生的な感覚に後押しされてするもの」、「出来る人が、出来る時に、出来る事をやる」の理念を持ち活動している。東松島市でなくてならない存在として頼りにされている団体の代表は、エネルギッシュに動きながら全国からの相談の電話に親身に寄り添う。
優しいたたずまいの理事長 神吉雄吾さん、副理事長 神吉恵子さんにお話を伺った。

成り立ち

2008年5月 児童養護施設出身の神吉理事長によって任意団体として設立。
        ウェブサイトを通じて寄せられる寄付やボランティアの仲介を行う。
        施設イベントに協力参加。学習支援などに参加する。
        一般からの育児相談、児童からの相談も対応する。
2011年3月 東日本大震災による被災者の支援活動を始める。
        被災地、東松島市鹿妻地区に「鹿妻ボランティアチーム」を結成。
2011年9月 「東松島復興協議会」第一回会議より加盟団体となる。
2012年2月  内閣府よりNPO「特定非営利活動法人」の認証を受ける

牛網保育園だった建物を事務所として借り受けている

主な活動

・児童養護施設の支援活動

全国の児童養護施設で暮らす子どもたちの支援や、保護者や子ども、施設側からの支援相談等に対応している。また、寄付、寄付の仲介、学習支援から就労支援等まで行っている。

・被災地復興支援活動

東日本大震災による甚大な被害のあった宮城県東松島市に拠点を置き、多岐にわたる復旧復興支援活動に取り組んでいる。また、被災地における遺児たちや被災児童の支援活動を行っている。

・子どもの教育環境の整備

保小中学校の教育カリキュラムを支援している。

東日本大震災によって被災した保育所や小学校、中学校を支援している。被害が大きく現在も不自由な施設運営を余儀なくされている保育所や小中学校を重点的に支援している。

家庭の事情で学校に通うことが出来ない子ども、学校生活に馴染めない子ども。いじめを受けたりその他の理由によって不登校になった子どもたちに、自由に集まれる居場所つくりを目指している。

今回「児童養護施設支援の会」の設立者であり、自身も社会的養護出身者であるという理事長の神吉雄吾さんにお話を伺った。

児童養護施設を支援する活動が本格化した矢先 東日本大震災が発生、ためらいなく現地の児童養護施設を目指して出発した

神吉雄吾さんは、2008年埼玉県春日部市で「児童養護施設支援の会」を立ち上げた。

2011年1月には児童養護施設を支援する活動がいよいよ本格的になってきた。

そのような中で、3月11日に発生した「東日本大震災」の報に衝撃を受け、神吉さんはただちに行動に移したことについて当時の心境を次のように語った。

東日本大震災の際、テレビに映し出される空撮映像を見ているのがすごく嫌でした。屋根の上で助けを求めている人がいると「撮ってないで降りて一人でも助ければいいのに!」と思いました。どんな状況かわからないけど行かないともっとわからないと思い、とりあえず現地へ向かうことを決めました。当時17歳の娘の誕生日が3月22日ということもありそれまでには必ず帰ってくると決めて妻の恵子(副理事長)と向かいました。行く前に東北の施設に片っ端から電話しましたが全て不通でした。そこで地図上で一番海に近かった気仙沼の施設に向かいました。

埼玉で、食料品、医薬品、発電機などを買い、震災4日後の3月15日に出発しました。発電機は安い物は売れてしまっていて残っている物は30万円でした。役に立つかどうかわからないものに30万円出すのは勇気が要りましたが、絶対活用すると決心し購入しました。これは後々発電機がなかったら何のために行ったのかわからないくらい役に立ちました。道中、どこで道路が途絶しているかわからない。福島辺りは電気がまったく点いていませんでした。国道4号線も真っ暗。目の前に道があるかどうかという不安の中車を走らせました。

暗闇の中、16日の夜22時頃、気仙沼の児童養護施設の旭ヶ丘学園に着きました。70名位の規模の施設です。真っ暗だったのですが、窓が曇っていたので中に人がいるのはわかりました。朝になったら声かけようと思っていたところ、懐中電灯を持った人が中からたくさん出てきて、人の数の多さに驚きました。高齢者の方も抱えていて、避難所のようになっていました。

発電機を持っていったおかげでお米を炊けたりできて非常に感謝されました。子どもたちが元気で安心しました。

ありったけの荷物を下ろして、3月18日一旦埼玉に戻りました。その後、情報を集めなおして再び北上しました。

私自身も児童養護施設出身。昔の話ですが、中学生になるときに父親に引き取られたものの養育できる状況ではなく、家を飛び出して食べるものに困ってコンビニで盗みをし食いつないでいた時期もありました。ですので、気仙沼に向かって泊まる場所がないとか、食べるものはあるのか、そういったことに関する不安や恐怖心はありませんでした。行く勇気が出せたのはそういった経験をしてきたからだと思っています。

2013年の地元新聞 絶大な信頼を寄せられていることがよくわかる(姓は当時)

ダンボールにマジックで書いた感謝状、役所の方々の籠められた思い、決意

埼玉と東松島を行き来する生活が続いた。東松島の地で、重機やチェーンソーを駆使して瓦礫や倒木の処理を行った。そうして仮設住宅など地元の人たちの困りごとに寄り添っての日々に飛び込んでいた。
雄吾さんが扱える機器類は、副理事長の恵子さんも操縦できるようにしていった。
そのようにして地域ではいなくてはならない人たちになっていった。会の仲間たちも活動に通ってくる。

「児童養護施設支援の会」の活動拠点を東松島市に移し、使用しなくなった保育園を無償で借り受け事務所として活動している。
事務所内部の様子、各所から贈られた感謝状をお見せしたい。

この位置まで水が来ていた、約1.2メートル

作業したメンバーで撮った被災から間もない頃の写真

保育園だったことがわかる、可愛いカラフルな便器

床は水に浸かっていたためガタガタぼこぼこだ。低いステンレス洗面台も保育園の名残

震災の日、水位がどんどん上がって行く中、保育士は園児を一番上の棚に押し上げたと聞いた

ピアノの上に避難したときの泥の手形が天井に残っている

カエルは「児童養護施設支援の会」のシンボルマーク

被災間もない平成23年5月の感謝状

平成23年11月に頂いた感謝状

「被災地の実情を深くご理解いただき」とある

東松島市が震災を教訓に立てた復興計画事業を下支えした

災害復興の事業「太陽光発電技術者養成」を行うことが決まり、被災した浜市小学校の体育館内に模擬屋根を設置して技術者になるための研修の会場に使うこととなった。(太陽光発電工事専門校 関連建設技術講座)

そのときに、浜市小学校の床をはがし会場整備を行い、講座が出来る用意を無償で行ったのも、児童養護施設支援の会の実績だ。

 

「児童養護施設支援の会」のあり方は「仲介に徹するということ」

神吉さんは、活動の柱についてこう語る。

ニーズを聞き取ってつなぐ。支援者と施設の間に入ることはとても重要です。

寄付金をいったん預かってどこかに渡すという作業でもとても手間が掛かります。施設に直接何が足りないのかあらかじめ聞いておきます。例えば「包丁が足りない」や「エプロンが足りない」とか言われることがあったとしましょう。じゃぁそれが買えるお金をお渡ししますという感じで、支援者にはその購入分支援できるかを聞いてある。そのようにずっとダイレクトに届くようにやってきた。

子どもを預かっている施設としては先生からすると、自分たちが使い慣れている道具を集めたくても支援で届くものって子どもたちのためのおもちゃが多い。先生が必要としている事務用品的なものが足りていないのが現状。そして直接施設からメーカーに注文してもらって、請求書は支援者に送ってもらい、お金のやり取りはそこで完結するようにしています。そのような仲介に徹してきました。

この形をとっていると支援者の達成感が違います。自分が支援したお金が何に使われているかわかるからです。また、施設も支援者に直接礼状を送れるというメリットがあります。

施設から巣立ったあとのことを思いながら

貧困は社会が豊かになってきたから出来てきたとも言えると思います。

震災や児童養護施設で傷ついている子どもたちを見ていると思うのですが、こうゆう子どもたちって押されたり叩かれたり経験があるから強いはずなんです。何かを乗り越えたり、きっかけを与えてあげれば社会で生きていけるものすごい強い子になると思うんです。

みんなそれなりの強さを持っているんです。

若いうちや社会に出る前は苦労すると思うんですが、打たれ強くなって欲しいです。

情報社会が故にやってみる前に情報を得て一歩踏み出さない子が多いと思います。

実際の経験が足りない子が多いんです。その中で色んなことの選択をしなきゃいけない。

ドロップアウトしてしまった子でもまた再挑戦してやれることはたくさんあるからそういった場を提供したいのです。

何かしら経験をしたり努力をしたりして成功体験や自己肯定感を積んでいってもらいたい。

堂々とじゃないけど「俺施設出身なんだ」と一つの個性として言える人になってもらいたい。施設出身者の子どもが私みたいな活動をしてくれるといいなとも思っています。

11月には埼玉県の児童養護施設「あゆみ学園」学園祭の設営、運営を行った

ウエアはトレードマークのカエルグリーンだ

その他食事会の実施、クリスマスプレゼントを寄付者から受取りパッケージして多くの施設に届ける活動も行っている

学園祭は在所児童のお楽しみの日、そして施設を巣立った若者たちが里帰りにやってくる

優しい大人たちを束ねて、静かに地道に活動をしていく神吉さんご夫妻のたたずまいに、生きづらさを抱えた子どもたち、施設を支援する心の原点を見た思いである。
そして人生の途上で人一倍辛酸をなめた人からの香気を感じた。

児童養護施設を支援する会のHPより

「未来を創るのは子どもたちです」

 より良い社会と明るい未来を創るためには、今を生きる子供たちの育ちの環境を支えて行くことが何よりも重要です。

 私たちはこの国に暮らす全ての子どもたちが、より安全で明るく平和に暮らして行けることを願っています。

 大人社会の都合によって傷ついたり悲しんだりせずに、笑顔があふれ楽しく生きられることを願っています。

 それぞれの子どもがそれぞれの個性を生かして、充実した自分の人生の道を自信を持って歩けるようになることを願っています。

 私たちは未来を背負う子どもたちのために、今を生きるひとりひとりの子どもたちのために、みんなの力を持ち寄りながら、今後も出来る事から取り組みを進めて行こうと思っています。

                                設立者 神吉雄吾

「児童養護施設支援の会」

特定非営利活動法人(NPO法人)児童養護施設支援の会
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