「深谷若者サポートステーション」ご紹介「うまくいかない今を変えよう! 自立に悩む若者を応援」②

インタビュー/特別寄稿

2017/10/27

サポステってなに?

働かなきゃいけないのはわかってるんだけど、自信がない・・・
コミュニケーションが苦手・・・
なかなか仕事が長続きしない・・・
ブランク期間があるので履歴書や面接でどう伝えていいかわからない・・・
このような、就労・学校中退など、若者にとって最も大切な課題、「自立」について悩んでいませんか?

■サポステ登録者からの成長の姿

地域若者サポートステーション(愛称:「サポステ」)では、働くことに悩みを抱えている15歳~39歳までの若者に対し、キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練などによるステップアップ、協力企業への就労体験などにより、就労に向けた支援を行っている。

この日は地域に根ざした取り組みをしている深谷若者サポートステーションを訪ね、事業の中でのご苦労と喜びをお聞きした。(2017年6月20日)

引き続き、就労に一歩踏み出した若者たちのお話をお三方に伺う。

清水陽子さん(総括コーディネーター キャリアコンサルタント)
茂木宏幸さん(臨床心理士)
初谷隆さん(キャリアコンサルタント)

■サポステ登録者からの成長の姿

清水 Y君のこと。サポステの利用者で、そこから「とうふ工房」の就労体験をして、今「とうふ工房」で働いています。週に1回はサポステの非常勤スタッフとして、毎週月曜日に出勤しています。毎月レシピなどを掲載した印刷物も作っているんですよ。

コンパスナビ すばらしい。こういう人は社会の中で居場所見つけて定着しますね。

清水 ただ、まじめ過ぎる。ほんとまじめ過ぎる。働き過ぎ、休みなく働いている。ほんとにまじめでまじめでという感じで。

コンパスナビ ぽきっと折れなきゃいいですけどね。上手に力を抜いてくれるといいんですけど。

初谷 抜かない、抜かない。

清水 抜かないですね。一生懸命ですね。

コンパスナビ 親御さんは喜んでいるでしょう。

清水 喜んでいるも何も、今となってはほんとに普通の子でどうしてサポステに来たんだくらいの気もするところもあれば、やっぱりまじめ過ぎるというところもあるんですね。
サポステに来る子の特徴として100かゼロにしがちですね。ほどほどがないような。そんなところも見受けられるかな。でも気が利くし、販売すれば人と接するわけですからね。
彼がここにいてくれることで、またサポステからの就労体験の子を送り出して、彼が面倒見てくれているっていう・・・。

コンパスナビ いい循環が生まれている・・・。

清水 そうです、そうです。

コンパスナビ なるほど。そういうふうに立派に育っていく人がいるのですね。

清水 そこです。サポステから出発して、地域へ、そしてまたサポステに戻ってきてくれているといった形の。

コンパスナビ そういうことができる人が育ったんですね。多くの相談者のうち1人でもそういう子ができればなんか報われた気がしますよね。

清水 この子にはほんとに将来性を感じますよ。

コンパスナビ この人は高校まで出ているんですか。

清水 大学まで出ています。

初谷 この子の場合は、数学の家庭教師のアルバイトもしたことがあります。

清水 一般にサポステの相談者は高校卒業よりもやっぱり大学院、専門学校、大学卒のほうが多いです。割合、高学歴です。アルバイトも何にもしないで、お母さん、お父さんに守られた中、レールに乗って中、高、大までは行けちゃった。その代わり家でお手伝いするわけでもアルバイトするわけでも、部活とかサークルをするわけでもなく、もうそこまで来た。卒業した後、どうしましょうとなる。そこからはもう自分の力で切り拓くところじゃないですか。しかし就活もできなかったりしてつまづく・・・・・・。

 

■2014年9月、母親と相談に来た35歳の青年は熊谷のジョブセンターで身体を動かして働き始めた、「○さんのおかげ」と人に感謝できるベースを持っていた

初谷 2014年9月に母親と来所した当時、私が担当になって1年ぐらいしかたってないんだけど、彼がしゃべるようになってから経緯を聞くと、「最初、担当になった人には悪いことしたな」、「俺来ても全然しゃべんなかったし」って言っています。最近はそんなこと言うようになってきたんです。

清水 あるときからぐっと変わりました。人とのかかわりに少しずつ慣れるのに時間かかったんでしょうね。最初来た頃の感じと全然変わりましたよね。農業体験にはよく参加していました。いろんな人とかかわりを持つようになってからでしょうね。

初谷 サポステに来つつ農業ボランティアに行ったり、清掃で来ていたり、活動的なボランティアにも来ていたのと、あと介護職初任者研修を受けましたね。

清水 ダメ元で、とにかく生活リズムを整えるでもいいよ、何とかでもいいよ的な感じで接していました。嫌と言わない子だったこともあって、資格の一つだよ、と取得の案内をしたんです。

初谷 案内して、その研修を修了してから私が担当になったんです。そのときに、じゃあ介護のボランティアで何か行ってみる?と言うと、今度は全然自信持てなくて、仕事の話をちょっとするともう、シュンとなるような感じなんですよ。

 面談を繰り返していたんだけど、「面談よりも活動だ」と思いました。農業ボランティアや、ワーカーズコープの事業の中で味噌を作ったりするところもあるんです。それは有償ボランティアで1日4,000円ぐらいお金をもらえるのかな。そういうのに常連さんになって行っていたり、そういう中で結構おばちゃんたちとしゃべったりしていたんです。2016年の6月からジョブセンターというのが熊谷にできて、発達障害のある子も行っていいというし、私の前に担当していた人がそのジョブセンターに異動になっていた、茂木さんもいるし、と行きやすい環境になっていたのでジョブセンターに行ってみるか?と言ったら、うんと言って、行き出したらほぼ毎日行っているのかな?。

茂木 ほぼ毎日ですね。

コンパスナビ その人は自宅から熊谷のジョブセンターに行くのにはどうやって行くんですか。

初谷 電車です。電車は乗れたんですよね。普通に高校卒業していて、今だったら発達障害という言葉があるけど、昔はああいう人職場にいたなあ、というタイプの人です。要は自信がないっていうのがその子の一番の、一歩踏み出せない理由だったようで、熊谷のジョブセンターに行き始めるようになり、たまにここ深谷のサポステに来ると結構冗談を言うようになってきたんですよ。
それで今はこうやってしゃべれるけど、あの頃はちっともしゃべれなくて悪いことしちゃったな、という話になるんですよ。

清水 この子はベースに、人に感謝ができるんですよね。何々さんのおかげですと言えるんです。感謝の気持ち、やっぱりこれは親御さんの育て方だったり、本人の持っているものなんでしょうね。だから伸びたんだと思います。

初谷 性格的に内向的と言うんですか、自分を責めちゃうんですよね。なんかあると、自分がなんか悪いことしちゃったなみたいなところがある人なんです。

コンパスナビ 優しい人なんですね。

初谷 彼がこの4月から職場体験のプログラムをサポステでやることになって、ワーカーズコープの現場で彼の自宅から通える範囲のところで病院清掃の現場があるんです。そこに、じゃあ1週間とか就労体験行ってみる?と声をかけたら、ちょうど働く気になっていた感じだったのかな、いいですよと二つ返事で受けてくれて、見学に行って職場体験を8日間したんです。
なにしろ心配性なので最初に行く前には何か不安があるとよく電話かけてきて、持ち物は何ですかねって確認する子なんですけど、行き出してからはそういうことはないです。その間にちょっと私も顔出したりしたんですけど、勤め上げたときには、最後には、もっと自分に自信を持っていいんですねっていうようなことを口にしていました。

コンパスナビ そんな言葉が自分から出てきたんですね。

初谷 というのは、彼を担当してくれた人が励ましてくれたり、声をかけてくれたからだと思うんですけどね。

コンパスナビ 深谷サポステを、例えて言えば母校みたいな気持ちでいるんでしょうね。だから、自分の変化、成長を報告ができるところがあるっていうのはうれしいことだと思うんです。いいお話ですね。

初谷 就労体験が終わって次の月曜日に、向こうも人手不足なので、先方が、よくやってくれるし、全然普通の子だし、ぜひ働いてもらいたいという風に言ってこられました。じゃあ、いつから行く、来週からいくか?と言ったら、いや、ちょっと言って、2週間空けたんです。

そこはよく考えて答えていました。時間はどうする?と言ったら、朝は全然平気ですからと言い、病院のちょうど忙しい時間帯が朝6時半からお昼までという時間帯で働き出しました。働き出す前にまた電話かけてくるかなと思ったら、そしたら、行きなれているからと言って向こうからは電話をかけてこないんですよ。逆にこっちから心配で電話かけたりしているんですけど。

コンパスナビ じゃあもうすっかり慣れたということですね。

初谷 ちょうど今日で1週間たち、2週間目に入ったところです。ジョブセンターに毎日通っていく電車賃とか、就労体験に行く電車賃なんかも自己負担なんだけど、親御さんは不平など何も言いませんでした。親が否定的なことを言っているなどとは彼から聞いたことがありません。
なにしろ地域が広いので、交通費がなかなかかかるんですよ。ここに来るのも、本当に千幾らかかかるようなところだし、そこのところはご一家でよく頑張れたなと思う。

彼に今度、ポートステーションの関係各所のスタッフを集めての来月の連携会議で、当事者の体験談としてちょっと話をしてもらう予定でお願いをしているんです。

コンパスナビ 皆さんの前で話すというのは何より自信につながるでしょう。

初谷 来たときが35歳だったので、今37、38ですね。8月で38歳になるのかな。

コンパスナビ 良かったですね。40歳前で見通しがつきましたね。年齢が上がるにつれてだんだん適応が難しくなると聞きますから。

清水 そうです、本当に難しくなります。

 

■今年度から埼玉県では「地域の多様な人材との連携による高校生自立支援事業」を行っている

趣旨:「地域若者サポートステーション」と連携して、個人指導や社会的自立を促す取組などの各種事業を実施し、生徒の社会参画や就労を見据えた自立支援教育を推進する。
 また中途退学や卒業後、就業できない生徒に対し、切れ目なく自立支援が継続できる体制を整備する。 

もうひとつ重要な事業について話を聞いた。

深谷サポステは、4つの定時制高校の自立支援事業を始めたところだと伺った。

進路が決まらないまま学校を中退した若者の場合、その後年齢を重ねてもなかなか無業の状態から抜け出しにくい実態がある。

そのため、中退者等が就労へつながるよう切れ目のない支援を行うことが重要であると考え、全国にある地域若者サポステでは、中退した人、進路未決定卒業生の就職を支援している。

参照:「サポステは、若者の職業的自立を、教育機関の皆様と共に、継続的に支援する施設です」

学校に在籍している間は、ある意味セーフティネットに守られている、社会からドロップアウトすることから距離を置ける。

しかしながら進路未決定で高校を卒業、または中途退学してしまう現実がある。相談先としてサポステがあることは安心に繋がる。
(補足:高校中退防止については、現在、高校内に居場所カフェ事業が進んでいる。
第一号は2012年度から大阪府立西成高校での「となりカフェ」(一般社団法人ドーナツトーク)。2014年度神奈川県立田奈高校「ぴっかりカフェ」(NPO法人パノラマ)。川崎市立川崎高校定時制「ぽちっとカフェ」(社会福祉法人 青丘社)。」横浜市立横浜総合高校「ようこそカフェ」(公益財団法人 よこはまユース・NPO法人 横浜メンタルサービスネットワーク・NPO法人 多文化共生教育ネットワークかながわ 共同運営)、神奈川県立大和東高校「BORDER CAFE」(NPO法人パノラマ)、都立砂川高校 カフェing (育て上げネット)と広がっている)

 

■厚生労働省のページには、「サポステと高校の連携について」、神奈川県立田奈高校 金沢信之教諭が端的に語っていらっしゃるので引用したい

「たくさんの大人に会うことが若者の未来を広げます」
                (金沢 信之[神奈川県立田奈高等学校 教諭])

田奈高校に来て10年になりますが、生徒から就職相談を受けるなかで、学校だけでは補えない部分があると感じ、 7年前から外部団体と連携して就職支援を行っています。なかでも、サポステ相談員の方によるソーシャルスキルトレーニングはとても有効。 高校生のうちに職場でのコミュニケーションを身に付けられるので、就職率の向上だけでなく、離職率低下にもつながっています。 就職先が決まらず卒業した生徒も、在学中に会ったサポステの方をたよって相談に行くケースもあり、 サポステと学校が連携して支援を続けて行けることにも大きなメリットを感じています。

実際のところ、高校を卒業してしまうと支援も途切れてしまうことが多いのですが、サポステは継続的な支援の担い手であり、 若者たちの希望をつないでくれる存在です。就職先が決まらない生徒だけでなく、 仕事を辞めたくなったとき、悩みを打ち明ける場所があるということも、生徒たちの心の支えになっています。 人生の早い段階で、 教師や親以外の頼れる大人に出会うことは、子供たちにとってはかけがえのない財産。 学校が外部とつながりを持つことで、 人生の選択肢が増え、卒業後も継続的に支援を続けて行くことが、生徒の未来を広げると信じています。

参照:厚生労働省「サポステ 教育機関の皆様へ」


若者の自立、それは精神的自立、社会的自立であり、職業的自立の裏づけがあって初めて可能になる。
地域によっては、サポステ相談者の中には、社会的養護出身者も多数含まれている。

サポステの役割はますます重要で、崇高である。
マンパワーの質・量ともの充実が一層求められるところだ。

最後に、深谷とうふ工房について

「食」は人を元気にする、弱った心と身体を再生させる 「とうふ工房」というシンボル的な存在は多くの人に力を与え続けている

深谷で愛されている「とうふ工房」について触れておきたい。

コンパスナビの訪問時は2017年6月20日。

深谷シネマがある七ツ梅酒造跡は深谷駅から10分くらい歩いたところにあった。

「深谷とうふ工房」として使用されているところは、地元の銘酒「七ツ梅酒造」跡の、中山道に面した趣のある建物群のひとつである。

こちらの豆腐は、埼玉県産大豆100%と酒精にがりだけで造られているそうで、ブログを読むと心惹かれるラインナップだ。

・愛彩とうふ・ざるとうふ・深谷ねぎ入りのがんもどき・青豆を使用したおぼろ豆腐(地元の青大豆を使った甘みのある濃い味)・きび糖を使ったきな粉クッキー・黒砂糖と味噌のおからクッキーは薄くて堅焼きタイプ・油揚げ(参照:食べログ 豆腐工房七ツ梅店

「食」は人を元気にする、弱った心と身体を再生させる。「とうふ工房」というシンボル的な存在は多くの人に力を与え続けている。

なお、とうふ工房は大谷店(開業1996年)七ツ梅店(2号店 開業2011年)で営業してきたが、2017年10月下旬に、深谷市東方4294-6に移転するとのことだ。

では、サポステの役割、深谷での活動の基盤と信頼について紹介した。

深谷若者サポートステーション
〒366-0825 埼玉県深谷市西島4-2-61
ウエストビル 201
TEL:048-577-4727

事業主体:ワーカーズコープセンター事業団