「深谷若者サポートステーション」ご紹介「うまくいかない今を変えよう! 自立に悩む若者を応援」①

インタビュー/特別寄稿

2017/10/27

サポステってなに?

働かなきゃいけないのはわかってるんだけど、自信がない・・・
コミュニケーションが苦手・・・
なかなか仕事が長続きしない・・・
ブランク期間があるので履歴書や面接でどう伝えていいかわからない・・・
このような、就労・学校中退など、若者にとって最も大切な課題、「自立」について悩んでいませんか?

地域若者サポートステーション(愛称:「サポステ」)では

地域若者サポートステーション(愛称:「サポステ」)では、働くことに悩みを抱えている15歳~39歳までの若者に対し、キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練などによるステップアップ、協力企業への就労体験などにより、就労に向けた支援を行っている。

サポステでは、働くことに踏み出したい若者たちとじっくりと向き合い、 本人やご家族の方々だけでは解決が難しい「働き出す力」を引き出し、 「職場定着するまで」を全面的にバックアップする厚生労働省委託の支援機関で、全国に、173ヶ所の地域若者サポートステーションがある(平成29年4月現在)。

埼玉県内には4箇所、深谷若者サポートステーション(深谷市)埼玉とうぶ若者サポートステーション(春日部市)・地域若者サポートステーションさいたま(さいたま市)・かわぐち若者サポートステーション(川口市)にある。

この日は地域に根ざした取り組みをしている深谷若者サポートステーションを訪ね、事業の中でのご苦労と喜びをお聞きした。(2017年6月20日)

深谷若者サポステは埼玉県の北部地域を主な対象として事業を行っている

運営主体であるワーカーズコープは深谷で「仕事おこし」をはじめて30年になる。
生協の物流での荷物の積み込み作業から豆腐づくり、お弁当の配食、さらにヘルパー講座を経て高齢者介護事業を展開している。
「若者就労支援事業=地域若者サポステ」は、このような地域に根ざした事業の土壌の上で展開されている。
さらに、熊谷にて発達障がい者の就労支援センター「ジョブセンター」事業を行っている。

経験豊かな三人のスタッフにご対応いただいた。

清水陽子さん(総括コーディネーター キャリアコンサルタント)
茂木宏幸さん(臨床心理士)
初谷隆さん(キャリアコンサルタント)

■キャリアコンサルタントの初谷隆さんに七ツ梅酒造跡(母屋)と深谷若者サポステとのかかわりについてお聞きした

コンパスナビ 深谷は深谷ネギが有名ですが、他に旧中山道沿いにある印象的な建物「七ツ梅酒造跡」のことがネットに出てきます。深谷サポステ運営主体のワーカーズコープさんの事業の一つで「とうふ工房」直売所になっていると聞きましたが・・・

初谷 以前、熊谷でも引きこもりの若者の居場所支援などを行っていたのですが、ボランティアで七ツ梅酒造跡の建物を掃除したりとか、窓磨いたりとかで月1回くらいは出向いてきていました。そのうちの一つ、母屋の窓や床や壁を磨いて2013年に深谷若者サポステの事務所として使用し始め3年間活用しました。後に近隣のこちらのビル(深谷市西島4-2-61)に移転しました。

サポステとして使用しなくなってからは、深谷とうふ工房 七ツ梅店の店舗として地域の親しまれています。サポステ登録者も店舗で就労のトレーニングをします。

(七ツ梅酒造跡、とうふ工房のことは後ほど触れることとする。)

 

 

■サポステというところは働くにあたっての準備運動ができる場所である

では実際にどこまでサポートしてくれるのだろうか。
厚生労働省のサポステの情報ではこのように紹介されている。

① 予約
② 相談・面談
③ 各種支援(コミュニケーション講座・ジョブトレ(就業体験)
       ・ビジネスマナー講座・就活セミナー(面接・履歴書指導など)
・集中訓練プログラム・パソコン講座・ホンキの就職・アウトリーチ支援)

④ 就職
⑤ 定着・ステップアップ支援

(参考 厚生労働省 サポステ )

■埼玉県地図の左の1/3の広大なエリアから相談があると考えると、深谷サポステの事業はなかなか大変だ

新規登録者の居住地は、深谷市、熊谷市、本庄児玉、川越近郊、強打・羽生、東松山・比企郡、群馬県、さいたま市・上尾、大里郡、秩父市と広域である。
サポステの事業の③の中に「アウトリーチ支援」とあるが、深谷若者サポステでは、秩父市(毎月第2金曜日 9:30 ~ 16:40)、本庄市(毎月第1火曜日 9:30 ~ 16:40)、鴻巣市(毎月1回水曜日 13:00~17:00)で、定期的な出張相談を行っている。

■定着・ステップアップ支援について

統括コーディネーター、キャリアコンサルタント 清水陽子さんに伺った。

清水 現在、従来のサポステ事業に加えて、卒業生への「⑤定着・ステップアップ支援」が始まっています。ここでの「卒業生」の定義は「サポステを利用して就職決定し、現在、週20時間以上働いている15歳から39歳までの方」となります。

また、「定着・ステップアップ」とは、今の職場での定着、更に正社員への転換、有期雇用から無期雇用への転換、派遣から直接雇用への転換、所定労働時間の増加等を意味します。

わかりやすく言えば、仕事に就いたあとも、サポステに相談ができる制度です。

コンパスナビ 一方、毎年新しい相談者が登録し相談を開始されているのですから、サポステの業務はなかなか大変ですね。

■まずはじめは保護者が相談に来ることも多い

茂木 この3人の中では、私は2013年開始の深谷若者サポステでは一番長いんです。4年ほど前、まだ事務所が七ツ梅酒造跡の母屋だった頃に20代半ばの息子さんのことで、最初はお母さんが一人でご相談に来られた話をしましょう。

あくまで私が受けた印象ですが、結構、引きこもっていたりとか、仕事しないというお子さんのことがやっぱり心配だからいろいろしなくちゃっていうふうに頑張っていて、それがなんか空回りしていて、かえって結果的にますます引きこもらせちゃうみたいなことがあります。でも、心配だからやっぱりいろいろしたくなっちゃうっていうご家族が多いかなという印象です。そのなんとかしなくちゃっていう一環でサポートステーションのほうに来てくださるのかなと感じます。

清水 お母さん方ですが、一人でいらっしゃる方もそんなに疲れ果ててくるような感じではないんですよ。

ただ、傾向としてどうしても心配で心配でっていう感じの過保護系、過干渉系が多く、子どもさんもやはり親御さんの影響を受けていますね。

茂木 この人は、高校卒業後、家の近くでアルバイトをしていたんですけど、そこのバイト先の方と合わないというか仕事ができなくて、それでバイト先の人に責められてしまってということがあって、それをきっかけに家に引きこもるようになったというケースです。メンタル面の不調もあり医療機関にお母さんがつなげて、その後サポステに相談に来たという経緯ですね。

コンパスナビ いろんな制度やプログラムが整っているサポステですが、本人の働こうという意志がなければ、進まないですよね。

清水 進まないです。やっぱり本人ですよね。私たちが見てこの子は社会に出られるだろうかって心配するような子でも、本人にやる気持ちさえあれば何かがつながる、あとは私たちはつなげ先をいろいろと開拓してきます。キュウリの箱詰めの場所に行ってみたり、シイタケ取ってみたりみたいなね。そういう彼らにできそうな、人とかかわりのない地味にこつこつできるような、緩やかな軽作業のできるつながり先を私たちは開拓しています。そういうところにつなげていかないと、既存の求人先に行って面接を受けてっていうことが無理な子がたくさんいるじゃないですか。

コンパスナビ 向かい合っただけでびびってしまって言葉も出ないような人もいますよね。

清水 サポステには常に不安で自信がない、自己肯定感が低くなっている人たちが来ます。昨日、ちょうど正社員で採用されたというのに大喜びするどころか、不安で不安で仕方がないって言う人がいます。就労できたというのに、仕事が始まったら不安なので、次、いつ相談に来ましょうかってそんなことを言うんです。入社が決まったんだからさあ、頑張れってところなんですけどね。

コンパスナビ よっぽどのことがない限りはここからは自力で頑張るんだよ、という場面ですよね。サポステからの「卒業」がわかりにくくなくなってきているのですね。

■相談に来ている内訳は男女比は7:3

清水 2017年度の新規登録者は男子が72%、女子は28%です。年代は10代7%、20代55%、30代38%となっています。おとなしい若者たちで、全国的にも男子が多いですね。
まず、引きこもっていた子どもの就労支援については、親御さんのかかわり方が課題であると感じます。
親はだんだん齢を取るわけですから、子どもの引きこもりは親の困りごとのはずです。サポステが真剣に支援するにも関わらず親が無関心だったり、逆に相談を受け付けると親がサポステに依存し始めたり、かかわり方が難しいです。今日、子どもがこんなこと言った、こうだった、これ大丈夫でしょうか、みたいな質問がこちらに向かいます。

■「この子が働けるなんて夢のようです、こんな日が来るとは思っていませんでした」

コンパスナビ ここまで話を伺っていると、登録者と親に、ぶれずに平らかに接し支援事業に取り組むためには、サポステ職員のメンタルヘルスは最重要だと痛感します。ご苦労の多い事業ですね。

清水 それでも、いろんな形で成果が出てくることはうれしいことです。
中学校を卒業して以来、ずっと家に引きこもっていた19歳の男子の例ですが、週に9時間、短い時間ですが、1年間就労が続いているんですよ。

茂木 はい、彼はよく続いていますよね。

清水 お母さんは、この子が働けるなんて夢のようです、こんな日が来るとは思っていませんでしたとおっしゃっています。そういうとき、本当にうれしいです。苦しかった支援の伴走の日々があるからこそ喜びが深いですね。

■「七ツ梅酒造跡」を案内いただいた・・・ワーカーズコープがコツコツ築いてきた地域密着、地域連携 

ここでコーヒーブレイク。冒頭の「七ツ梅酒造跡」の話に戻ろう。
深谷サポステそばの七ツ梅酒造跡に連れて行っていただいた。約950坪の跡地には、色々な施設がある。

 

中山道に面した母屋が「とうふ工房」の店舗、酒蔵を改造してできた60席の映画館「深谷シネマ」、「シネマかふぇ」、「結工房」、「ふっかちゃん横丁」、「深谷宿本舗」「鬼瓦工房鬼義」ほかにも飲み屋さんや古本屋さんがある。昭和にタイムスリップしたような不思議な空間にしばし陶然とする。映画の撮影にも使われるとのこと。

 

清水 深谷シネマなどで就労体験でお世話になったり、地域活動で清掃ボランティアに行ったり、祭りに出たり、ペンキ塗りをしたり、農業やったり、地域密着ということでは、深谷市との連携はどんどん深くなっており、サポステ事業の認知度は高くなっているかなと実感しています。
苗床をつくっていて、次の土曜日田植えをします。他に法人の畑があり、ワーカーズコープとしての地盤がある中で地域の方との連携も培ってきています。

深谷シネマで現在上映されている映画のポスターを大きな布に描いた幕が印象的であった

では、相談から就労に踏み出せた成長の姿2例、高校との連携を紹介する。

深谷若者サポートステーション
〒366-0825 埼玉県深谷市西島4-2-61
ウエストビル 201
TEL:048-577-4727

事業主体:ワーカーズコープセンター事業団