「亘理(わたり)いちごっこ」ご紹介 代表 馬場照子さんに聞く
インタビュー/特別寄稿
2017/10/10
「温かいバランスの取れた食事を摂らせてあげたい」東日本大震災直後、その一心で始めた活動は被災地にて人と人を繋ぎ、癒やし、地域を照らしてきた、そして大きな家族になった
2011年5月、震災から間もない時期に立ち上がった団体『NPO法人 亘理いちごっこ』。
被災されて絶望している方々、また過酷な現場で作業をしてくれるボランティアのために、温かく、バランスの取れた食事を通して、少しでも心と身体を癒やし、少しでも明るさを取り戻すことのできるように……。そんな想いを込めて立ち上げられた団体だ。地域内外にネットワークを形成し、みんなで手を取り合い7つの活動を展開している。
ただし持続可能な活動にするには困難がつきまとう。多くのボランティア団体が常に課題とするところである。復興の願いを名産のいちごに籠めて『亘理いちごっこ』と名づけた。
今回はこの『亘理いちごっこ』の発起人であり代表の馬場照子さんにお話を伺った。
七つの活動とは
・交流の場であるコミュニティ・カフェレストラン「いちごっこキッチン 散歩道」。
・子供たちの勉強を見ながら交流を図る「亘理こどもサポート…寺子屋いちごっこ」。
・被災された方々のお話を聞く「いちごっこお話聞き隊」。
・亘理地域の発信としていく特産品を使った「いちごっこブランド製造」。
・手作り品を作りながら共に支え合う「いちごっこ手作りグッズ部門」。
・学びと交流の機会を住民自ら企画運営する「サロン活動」。
・地域内外の団体個人が手を取り合い、地域ネットワークを形成して取り組む「イベント活動」。
と、交流スペースを提供しながら様々な活動を繰り広げている。
ホームページより
・交流の場であるコミュニティ・カフェレストラン「いちごっこキッチン 散歩道」。
・子供たちの勉強を見ながら交流を図る「亘理こどもサポート…寺子屋いちごっこ」。
・被災された方々のお話を聞く「いちごっこお話聞き隊」。
・亘理地域の発信としていく特産品を使った「いちごっこブランド製造」。
・手作り品を作りながら共に支え合う「いちごっこ手作りグッズ部門」。
・学びと交流の機会を住民自ら企画運営する「サロン活動」。
・地域内外の団体個人が手を取り合い、地域ネットワークを形成して取り組む「イベント活動」。
と、交流スペースを提供しながら様々な活動を繰り広げている。
ホームページより
震災からいち早く動いた亘理いちごっこ
温和なたたずまいの馬場代表は、来し方を振り返りつつ、柔らかな声でお話くださった
2011年5月に団体としての活動を立ち上げました。
事務所を転々としましたが、炊き出しとかしながら何が必要か考えました。ちゃんとした栄養のあるバランスのとれた食事をしなきゃいけないと思い、思うような食事をとれなかった人に、一部損害でも罹災証明書を持ってくれば、タダでご飯が食べられるようにしました。炊き出しレストランとして、ワンプレートバイキングで主菜2品目に副菜が3,4品用意しました。大きなお皿に盛れるだけ盛れてご飯もおかわり自由です。罹災証明書さえあれば誰でも無料でご飯を提供しました。
当時、どこも場所がなかったので、町の集会所を借りて活動をはじめたのです。
避難所で見たもの
心無い人が支援物資を配る担当になると被災者が可哀想でした。物をもらって生活をした経験が無い人が、物をもらう生活になる。そういった人たちが物をもらうということがどういうことかわかっていない。配る側も自分の物を配布しているわけじゃないのに、自分が物を与える感覚になっている人もいました。
「なんで挨拶しないんだ」「15分以内に出ろ」といったような言葉が飛んでいました。お年寄りにですよ?歩くのも楽ではないし、一度に持てる荷物の量も限られている。なんということでしょうね、悲しいことです。
もうひと間空いていたので、支援物資の服をハンガーにかけて、「これ似合うんじゃない?」とか、子どもたちには文具やお絵かきセットを置いて遊んでもらったりしました。避難所に入れなかった人も来ます。肩身の狭い思いをしながら支援物資を取りに来られます。家に何人いるのか聞いて人数分のうどんを渡したりしました。香川のうどんには本当に助けられました。
昔の昭和の家族がやっていたお隣同士の付き合い方みたいのがしたくて続けてくることができました。
ボランティアの人たちの愛
夕方になるとボランティアの人たちとご飯を食べました。大学を休学して来ている人や、塾講師の人などがいた。その人達に中学生に勉強を見てもらっていたりした。お母さんたちの後押しや姫路から先生が毎週来てくれたのがあり、続けられました。
そのうち助成金がつきましたが、仮設住宅だとそこに住んでいる子ども達しか使えないなどの細かい決まりが多くて、新しくプレハブを立てました。
外部の学生は狼煙をあげるように支援に来てくれます。アピールも上手い。
一方地元の学生たちが何をやっているか見えていなかったのですが、実はやっていたのです。
近隣の高齢者の支援や、地域のことをやっていたのです。学生が一対一で支援していたのです。
ただ、そうするとその学生さんたちが卒業してしまうとその関係は終わってしまいます。
東北大学が「サークルいちごっこ」という学内サークルを立ち上げてくれたのは継続性の上から、本当に嬉しく宝だと思っています。卒業生もイベントがあると顔を出してくれます。
また、ボランティアに来てくれていた聖心女子大の学生さんたちに自分たち主体で何かやってみませんか、と投げかけてみました。ゼミの先生にもご協力いただき、そして、勉強会とワークショップを開いてくれました。ホットケーキ焼いたり外で遊んだりしてくれました。同じ場所で勉強することの飽きてしまっている子どもたちに良い機会を作ってくれてすごくよかったです。
聖心女子大の方と東北大学の「サークルいちごっこ」の方達が3月に学生たちのミーティングでどんなことを今後やっていきたいかの企画を立ててくれました。そしてその結果、年4回だった交流行事をもっとやりたいということでキャンプをやろうということになりました。
基本的に学生たちが企画進行を全てしてくれています。
寺子屋いちごっこ
小中学生に塾をやっています。以前まで週三回やっていた塾ですが、今は定員が多くなってきたので、週二回ふたつにグループに分けて行っています。土曜は中学生対象に高校受験対策をしています。
どのクラスのチラシにも「経済的困難な方は相談に乗ります」と書いています。
月謝を低く抑えていますが、助成金をもらいながら運営をやりくりしています。塾を活用して、頑張って勉強して、志望校に合格してほしいですね。
学校は夏休み中の平日 小学生の姉弟は早い時間から勉強にやってきた
地域に根ざした活動を目指して縦の繋がりを意識しています
いろんな大人たちと関わることが大事だと思って様々なイベントを作っています。地域の大人たちにも子どもたちのことを知ってもらうということを続けています。
東京のハーモニィセンターからも協力してもらってサポートしてもらっています。ポニーに来てもらって触れ合うようなことをしてもらいました。みんな最初はポニーにびっくりしていましたね。
活動が認知されてきた=持続可能な活動に不可欠の視点の醸成へ
(2011年からずっと走り続けてきて)7年目にして今年の夏は夏バテで熱が出ました。
様々な企画をコーディネイトしながら他団体や県と交渉や、活動の発信活動もしています。
頭も身体もいくつあっても足りません。
運営の方は、各活動の金額は予算化できるようにしているのですが、なかなか上手くいっていないのが正直なところです。
はじめはNPOなのにお金取るの?といった声もありましたが、今では活動が認知されてきました。
ありがたいことに、ご自身はけっして裕福というわけじゃないのに毎月寄付をしてくださる方もいます。
展望を伺った
現在収支の合うような運営になっていません。
そういった中で健康的な食事をとってもらえるように、なるべく安い値段で提供しています。身体に優しいこだわりの食材を取り入れはじめて原価率も半分ほど。苦しいところですが、これを定着していきたいと思っています。
また、県の社会福祉課に妊産婦や赤ちゃんからお年寄りまで集える場所を作りたいと話をしています。それの足がかりとして町の方に相談したら、家庭的保育事業所をもう一箇所作ろうとしているということで、これをやってみないか?という話になりました。ここのサロンを使おうと思いましたが、宮城県から建築許可の建物じゃないとダメとなりました。そこで、すぐ近くの自宅の一画を借りて、始めてみました。これが収益の上がるものとしてきちんと確立させていきます。
次のステップとしては塾の運営です。
経済的困難な家庭には、寄付や助成金を集めて対応していきたいと思っています。
まとめ
これまで多くの方からお話を伺い、たくさんの方から支援してもらったと話してくれた馬場さん。交流スペースの提供だけにとどまらず、今ここに何が必要かを常に考え事業に反映させ続けている。
馬場さんの苦労と想いとそのストーリーが被災された地域の方々へと着実に伝わっている。
『亘理いちごっこ』はみんなが憩えて集える「沢山の思いを包み込む場」
そんな場所をこれからも作り続けていく。
悪戦苦闘の中で勝ち取った信頼や実績をまた聞かせてもらいに訪問するつもりである。
※「亘理いちごっこ」は子供の未来応援応援基金 未来応援ネットワーク事業の採択団体である。