東京都立秋留台高校を訪ねて③全国初の学び直しの学校
インタビュー/特別寄稿
2017/04/28
アキルスピリッツ―とことん面倒を見る熱い思い ③
学び直しを看板に掲げる学校にとって、生活指導の徹底は生命線だ。「ダメなものはダメ」と徹底することが大事、指導がぶれたら生徒が揺らぎ、低きに流れ、たちまち学校が荒れると。出口と入り口に直結した生活指導を徹底する。これからは制服指導が要だと強調する。
(東京都立秋留台高等学校 〒197-0812 東京都あきる野市平沢153-4 電話 : 042-559-6821 ファクシミリ : 042-558-3164)(アクティブラーニング推進校・授業のユニバーサルデザイン推進校・授業交流 拠点校、キャリア教育有料学校 文部科学大臣賞受賞)
最寄り駅:JR五日市線 東秋留駅より徒歩20分
生活指導の徹底は生命線だ!
入り口
編集部が学校にお邪魔した日は、中学三年生が出願にきていた。
校長のお話では、夏休みから9月にかけ、あきる野市、八王子市、多摩市の中学校を回り先生方と話してわかるのは、真面目でコツコツ努力するが成果が出せない生徒、それが中学の先生が一番何とかしたい生徒であり、その生徒の行き場に腐心しているということだ。そしてそれこそ秋留台高校が望む生徒像と一致する。
エンカレッジ校(※)の入試選抜は「面接」「小論文」のみである。
高校で遊びたい生徒が、勉強しなくていい学校としてこの学校を選び、真剣に学び直しを期待する真面目な生徒と競合してしまう現実がある。
生活指導の肝は服装指導
女子の茶髪・ピアス・化粧・ミニスカートは1セットだ。男子は裾の切れたずりおろしのズボンだ。
このような服装を断じて許さない指導を徹底し続け、中学生が見学に来たとき「ここは膝丈スカートの学校なんだ」ということがわかれば、真面目でコツコツ努力するが成果が出せない生徒たちが安心して入学できる学校だと認知されるであろう。
女子の茶髪・ピアス・化粧・ミニスカートは1セットだ。男子は裾の切れたずりおろしのズボンだ。
このような服装を断じて許さない指導を徹底し続け、中学生が見学に来たとき「ここは膝丈スカートの学校なんだ」ということがわかれば、真面目でコツコツ努力するが成果が出せない生徒たちが安心して入学できる学校だと認知されるであろう。
出口
就職希望者が急激に増えている。勉強は苦手でも社会人として力を発揮できる人材を育てている学校だ。校長は「平成28年度年間授業計画=アキルスタンダード」を指し示しながらポイントをお話してくださった。
学び直しの概念を説明した図がとてもわかりやすい。
伏せたコップには何も入らない。まず、コップを上向きに置く。次に、集中させて丁寧に水を注ぐ。これが「学び直しの作法」である。
年間授業計画とは、たとえば、一学期のいつにどういう内容のものをやるのかという全部の授業のシラバスである。見直して更新して第3版となったものを見せていただいた。
2年生全員が就業体験 教員は事前準備と、体験中の巡回へ出向く。とにかく手をかけることに注力する。
たとえば就職試験で販売関係の仕事に就きたいとしよう。消費税の計算ができないと就職試験で落とされてしまう。では、数学の授業で早い時期から何度も何度も演習をしておこう、となるのである。視点はあくまで出口(就労)に置いているということだ。この2月時点で内定が100名を超えているという学校はそうはない。主に校長・副校長が開拓した約60ケ所のインターンシップ(就業体験)先の事業所で二年生全員が体験してくる。それには先生方は事前の事業所への割り振り、体験中にも巡回して訪問することになり、大変な手間と労力が必要となっている。しかしこれこそが、若い先生方が、職場のどこを見ておかねばならないかを学ぶ重要な機会となる。
更にその上、就職につながったら、校長はじめ教員が卒業生の職場訪問に回ると聞いて、出口を見据えた徹底的な面倒見の良さに脱帽した。
たとえば就職試験で販売関係の仕事に就きたいとしよう。消費税の計算ができないと就職試験で落とされてしまう。では、数学の授業で早い時期から何度も何度も演習をしておこう、となるのである。視点はあくまで出口(就労)に置いているということだ。この2月時点で内定が100名を超えているという学校はそうはない。主に校長・副校長が開拓した約60ケ所のインターンシップ(就業体験)先の事業所で二年生全員が体験してくる。それには先生方は事前の事業所への割り振り、体験中にも巡回して訪問することになり、大変な手間と労力が必要となっている。しかしこれこそが、若い先生方が、職場のどこを見ておかねばならないかを学ぶ重要な機会となる。
更にその上、就職につながったら、校長はじめ教員が卒業生の職場訪問に回ると聞いて、出口を見据えた徹底的な面倒見の良さに脱帽した。
だから、校内を巡回する
同じ伝で、校長は言う。「授業を良くしたかったら、校長が毎日回れば良くなるんです。なぜかといえば、生徒たちは、校長・副校長がしょっちゅう校内を回られたら緊張感もあるし、下手なこともできないしとなるじゃないですか。来客がなければ常に校内を巡回しています」
校長が自ら動く学校は必ず良くなっていくともおっしゃった。視察の多い学校だ。校長、教頭、副校長が視察に来るところは良くなっていくとのことだ。クイックルワイパー片手に校内巡回の意義はこれにあったのだ。
同じ伝で、校長は言う。「授業を良くしたかったら、校長が毎日回れば良くなるんです。なぜかといえば、生徒たちは、校長・副校長がしょっちゅう校内を回られたら緊張感もあるし、下手なこともできないしとなるじゃないですか。来客がなければ常に校内を巡回しています」
校長が自ら動く学校は必ず良くなっていくともおっしゃった。視察の多い学校だ。校長、教頭、副校長が視察に来るところは良くなっていくとのことだ。クイックルワイパー片手に校内巡回の意義はこれにあったのだ。
磯村校長のクイックワイパーで校内を巡回する姿
菅副校長の後姿
それから、一緒に飲食をする場も大事なんだよと繰り返し言われた。若い教員にいざなわれて大阪である研修会に参加し、その後、道頓堀でお好み焼きとビールで論議を深めた。そのとおりだと思う。
「進路未決定」とNPO法人育て上げネットとの連携
さて、秋留台高校は、平成22年(2010年)NPO法人育て上げネットと連携を開始している。
一般に高校で卒業が決まっており、卒業後の就職先または進学先が決まっていれば「進路決定」、そうでなければ「進路未決定」として高校の進路概況に記載される分類である。
卒業してしまえば心配や不安があっても、現役の在校生優先となるのが実情だ。
NPO法人育て上げネットは、特別な支援を必要とする生徒や進路変更を考えている生徒、通常の進路指導にのれない一般就労が難しい生徒、就労に関する教職員や保護者に対する助言・援助を行う事業をしている。
高校とNPOが連携をしているフォーメーションの有効性にはこれからも注目していきたい。
在学中から外部組織であるNPOが生徒の生活や学習に関与して進路(進学、就職)の決定が不安定な生徒のフォローを始めておくことによって、卒業後、就労につまづいたときに連携が取りやすいのだ。
以上、今まで学力だけで見られていて、俺たちはダメだと思いがちだった生徒たちの自己肯定感の根っこにコミットする教育に総力をあげて取り組む様子をつぶさに教えていただいた。
リーダーの姿はどうあるべきか、子どもたちの出口のところをどう充実させていくかという視点のエッセンスを多岐にわたり聞かせていただいた。
磯村校長は、平成29年4月1日 秋留台高校校長として再任用された。
昨年秋の40周年から次の大きな節目へのビジョンをコツコツと実現されていかれることであろう。
これからも、高校教育の閉塞感と向き合い、教員を守る気概に満ちたぼうず校長から目が離せない。
※エンカレッジ(encourage)とは「励ます」という意味です。中学校での学習で十分に力を発揮できなかった生徒や、高校入学後あらためて学び直しをしたいと考えている生徒を励まし、自信を与え、潜在能力を伸ばすことを目的としています。そのために、基礎・基本を徹底し、体験を重視した学習指導を行います。また、服装・頭髪など生活指導を厳しく丁寧に行い、将来の目標を持たせる進路指導を行います。
出典:東京都立秋留台高校平成29年度学校案内