コンパスナビとは

社会に巣立つ青少年が、公平なスタートラインに立つ機会をつくりたい

わたしたち一般社団法人「一般社団法人コンパスナビ(令和3年5月2日「青少年自助自立支援機構」より改称)」は、そんな想いから始まりました。青少年が社会に巣立つとき抱える課題を、少しでも軽くし、困難に出会い道に迷ったときのコンパス(方位磁石)のような活動。

わたしたちは、そんな自らが実現してゆく活動を、「コンパスナビ」とブランディングしました。

一般社団法人コンパスナビ 代表理事挨拶

代表理事 皆川充

さまざまな事情で産みの親の家庭で育つことができず、施設や里親さんの下で生活をしている子どもたちが日本には約4万8千人余りいます(2022年3月現在)。親の死亡や病気、経済的な理由などによる養育困難、育児放棄(ネグレクト)、虐待など背景はさまざまです。このような子どもたちを公的責任において養育し、保護することを「社会的養護」と呼びます。毎年、約2千人以上の子どもたちが高校卒業に合わせ、社会的養護の下から巣立っていきます。児童福祉法では社会的養護の対象は18歳未満と定められており(2023年4月から巣立ちの要件が見直され、措置延長が可能となりました)、高校を卒業する年の3月末を迎えると、ほとんどの児童は社会的養護から外れ、自立を求められているのが実情です。

施設等を出た後、頼れる親族がほとんどいないため、住居費、生活費を自分の力で用意しなければなりません。就職をする割合は多く、進学率は全国平均と比較して低い傾向にありますが、進学しても生活費捻出のためのアルバイトで心身ともに疲労困憊するなどの理由で、中退する割合は高いのです。(注1)
また困難な生い立ちゆえにコミュニケーションが苦手な者も多く、就職しても職場での人間関係構築でつまずいたり、離職し住まいを失うこともあります。そして、そのような困難に直面したときに悩みを抱えながらも、誰にも相談できずに複数の課題を抱えていく厳しい現実があります。(注2)

私たちの活動は、2015年児童養護施設を巣立つ子どもたちへの運転免許助成からスタートしましたが、おかげさまでこれまでの実績(注3)が認められ、現在では私たちの活動の幅も広がってきております。
2016年10月、内閣府、文部科学省、厚生労働省、日本財団が推し進める「子供の未来応援国民運動」における、「平成28年度未来応援ネットワーク」の事業団体に採択いただきました。また2018年度からは埼玉県より「児童養護施設退所者等に対するアフターケア事業」を受託し、就労支援を中心に、住居支援、自立支援、居場所事業(クローバーハウス)を行っております。
クローバーハウスはさいたま市にある一戸建てで、時には生活や人間関係など様々な相談を受けることもありますが、普段は若者たちがのびのびと自由な時間を過ごしています。2022年度はコロナ禍の中、マスク・手洗い・検温の他に同時に在所できる人数を制限するなどしましたが、それでも700名以上の来所がありました。

2022年2月には、相談先が検索できるポータルサイト「webなびんち(注4)」を開設しました。ここには全国の行政窓口だけでなく、支援団体も検索ができます。いくつかの支援者は動画で紹介をしていますが、その紹介は社会的養護当事者が行っています。
私たちからアルバイトとして依頼し、直接訪問やリモートで支援者の取材を行いました。支援者さんとの対話を通し、人と接することに慣れ、回数を重ねるごとにコミュニケーションが取れるようになり、眼に見えて成長していく姿を頼もしく思います。

私たちの活動の基本は、当事者とともにあります。当事者の気持ちや人権を尊重し、時にはゆったりとした空間や時間を共有し、上記の取材アルバイトを通して新しい支援者とつながったり、信頼関係を醸成する中で就職や住居での困りごとの相談を受けたりしています。そのような中で、苦手だった人とのコミュニケーションもいつのまにかできるようになっていた、そんな成長した姿をこれまでに何人も見てきました。最初はうつむきがちで暗い話し方だったのが、クローバーハウスに来るたびにどんどん明るくなり、いつしか大笑いする姿を見せるようになった、そうした変化に触れる喜びは格別なものがあります。

コンパスナビは、今後その活動を「なびんち」ブランドで統一してまいります。検索サイトのwebなびんち、寄付をお受けする「なびんち基金」、サポーター制度のなびんちサポーターなど、当事者が困ったときに、皆さんが支援をしたいと思ったときに、そこに常に「なびんち」が寄り添える、そんな存在であり続けたいと願っております。

引き続き、当法人の活動に、できるだけ多くの皆様のご賛同、ご協力をいただけますよう、関係者一同、心よりお願い申し上げます。

注1:厚生労働省の調査(令和4年3月「社会的養育の推進に向けて」)によると、大学や専門学校への進学率は全国平均が74.2%であるのに対し、施設及び里親出身者は37.7%。また、全国児童養護施設協議会「施設退所者に関する緊急実態調査」では、施設出身者の大学中退率は約25%となっています。
注2:18歳で児童養護施設等を出なければならない子どもについて、厚生労働省は2017年4月から、22歳の年度末まで住居や生活費を提供する総合的な支援を実施することを決め、確実な自立への後押しをしていくことになりました。また、独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)では、2019年度より社会的養護出身者への給付型奨学金を始めました。
注3:2021年度までに230名以上助成してまいりました。2022年度からは株式会社インター・アート・コミッティーズに移管しています。
注4:日本財団、公益社団法人ユニバーサル志縁センター及び一般財団法人 日本民間公益活動連携機構(JANPIA)の助成金で制作しています。

一般社団法人コンパスナビ
代表理事 皆川充