「笑い」の力がもたらすもの ー児童養護施設の子どもたちへー Ⅱ 雀幸園②

コンパスナビニュース

2018/04/03

2018年3月10日、お笑いコンビ「オオカミ少年」(よしもとクリエイティブエージェンシー所属)が児童養護施設を訪れた(社会福祉法人 雀幸園)

 2018年3月。梅の花が咲きほころび、春を告げる風がまだ少し冷たいこの日、埼玉県熊谷市にある児童養護施設「雀幸園」に伺った。「雀幸園」は、1978年開園。現在、新木弘子園長のもと76名の18歳までの児童が生活している。社会的養護の充実という国の方針のもとすすめられているユニット化、小規模化を本園でも実践しており、より一層家庭に近づいた環境の中での養育をすすめている。
 コンパスナビと吉本興業のコラボレーション企画である、よしもと芸人の「オオカミ少年」が児童養護施設で行う「コミュニケーション講座」。「清水バージョン」と「かがくと森田君」のネタに反応する子どもたち、オオカミ少年 片岡さんの巧みなナビゲーションで笑顔と歓声の絶えない講座の後半の様子をお伝えする。(2018年3月10日)

実は、始まってから、ずっと気になっていたことがあった

それは、最後列にいる中高生の姿だ。決して参加しようとはせず、黙って見ている。この年の子どもたちにはありがちな、大人が用意したものに容易には乗らないということか。または、その日突然現れた大人たちへの警戒心から、楽しめていないのだろうか。

最初は、それも少しはあったかもしれない。けれども、それだけではないものが、ここにはあった。

この施設で生活する中高生は、小さいころからこの施設で育った子どもが多いと聞いていた。彼らは、大きなお兄ちゃんとして、年下の兄弟たちの喜ぶ姿を見守っていたのだ。休憩時間には、小さい子に交じって森田君のもとに行き、実験を楽しみ、物まね遊びには大爆笑。最後の記念撮影の時にはすぐに集まってくれた。そして、帰り際には玄関まで来てくれて「ありがとうございました」とご挨拶をしてくれた。ここは、大きな家族なのだ。園長先生がお母さん。そこに45人の子どもたちの大家族が共に暮らしているのだ。

 休憩中に、中高生が森田君のところにやってきた。「静電気を貯めるってどうやるんですか?もう一回見たいです」

 身を乗り出して、ついに膝立ちになってじっと見てます

 雀幸園HPより

 昭和53年開所当時のもの 児童福祉、社会福祉の道は平坦ではなかったと新木弘子園長からお聞きした。別の機会に紹介したい。

「清水バージョンの似顔絵描くよ~」

最後の授業は、「オオカミ少年」。「清水バージョンの似顔絵描くよ~」と子どもたちに紙が配られた。お絵描き好きの子どもたちは真剣だ。どんなふうに描こうかと、考えている様子の子どもも。「清水バージョンさん、こっちに来て~お顔見せて~」と、清水バージョンさんは引っ張りだこだ。素敵な、ユニークな清水バージョンの似顔絵が、次々に生まれた。紹介されるたびに、会場は大笑い。清水バージョンさんも喜んだり、困ったりと大忙しだ。宮崎駿監督に扮した「オオカミ少年」浜口画伯が「僕の描いた清水バージョン」と見せてくれたのは、なぜか「ウンチの清水バージョン」。子どもたちは大爆笑。子どもたちは、こうしたネタが大好きなのだ。

 お絵描き 大好き

 印象的な蝶ネクタイから描きはじめる、斬新だ

 え!グレイみたいだ「清水バージョンさんの似顔絵最優秀賞」、ねらいがGood!

 この高校生が描いたのでした、清水バージョンのハンカチが賞品

楽しい時間は、あっという間に過ぎた

最後に、片岡さんから素敵なメッセージが伝えられた。

「ディズニーランドのシンデレラ城の壁画の中に、一つだけ本物の水晶が埋まっているって知ってる?それを触ったり待ち受けにしたりすると幸せになるって言われています。どこにあると思う?普通はシンデレラのティアラ?って思うよね。違うんですよ。城下町があって、農村があって。その農村で働く女の子の耳のピアスに埋まっているんです。汗水たらして頑張っている女性が一番輝いているって言うディズニーからのメッセージなんですよ。皆さんは、これからもっと輝きます!」

 「脱いだ履物は、きちんと揃えましょう」という園長先生の教えを守って揃えられた履物。

 会場に飾られた卒業生への職員さんからのメッセージ。温かい言葉に、愛が感じられる。

「笑い」には、人の心を開かせる力がある

心の中に楽しさや温かいものを与えてくれる

そして、それは「つなぐ」力である

 新木弘子園長の挨拶

 本の読み聞かせ活動で長く施設を応援している皆さん

この日、子どもたちを思う人たちの心がつながった。そして、あの会場に響き渡った笑い声とたくさんの笑顔は、確かに子どもたちの心に、何かを残した。そのことを信じて、また次につないでいきたい。

 社会福祉法人 雀幸園
所在地: 〒360-0006 埼玉県熊谷市四方寺185
電 話: 048-525-2880

「笑い」の力がもたらすもの ー児童養護施設の子どもたちへー Ⅱ 雀幸園①