社会的養護の基本理念

社会的養護の基本理念

社会的養護とは、保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことです。社会的養護は、「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」を理念として行われています(厚生労働省HPより抜粋)。

社会的養護の下にある児童は、その状況や年齢などにより、複数の施設に分かれて生活をしています。最も施設数と児童数が多いのは児童養護施設で、全国に約600箇所あります。児童養護施設は大舎制による集団生活(20人以上)を基本とする形が最も多いのですが、家庭的な養育を目指す厚生労働省の方針に則り、小規模化が進み地域小規模児童養護施設(6人以内)、小規模グループケア(6~8人)の形態が増えつつあります。

また、大規模施設の小規模化とあわせ、一般家庭での養育を委託する里親、養育者の住居で家庭養護を行うファミリーホームなどの形態も近年増えてきています。

児童養護施設のほか、15歳以上の義務教育を終了した児童が生活する自立援助ホームがあります。こちらは児童養護施設を退所した児童や、中学を卒業した児童が働きながら生活をしています。

自立援助ホームの職員総数が児童の数より多いのは、児童養護施設の児童よりも抱える問題が難しいことも理由のひとつです。もともと自立援助ホームは、児童養護施設を巣立った後、完全に社会に独り立ちするまでの助走期間として、施設での生活を継続する役割があります。現在では中学まで様々な理由で不登校だったり、中学卒業後に親元を離れ働きながら生活している児童が増えてきており、きめの細かい心のケアや行動を見守るために、24時間体制を基本とした職員の努力が欠かせない施設が多いのも、自立援助ホームの持つ困難さを示す側面として理解する必要があります。

児童養護施設等への入所理由として、最も多い原因は「父母による虐待」で、次に「父母の放任怠情」「父母の養育拒否・棄児」などネグレクトが続いています。少子化は進んでいますが、施設で生活をする児童は減ることはありません。現在各施設で暮らす児童は約45000人で、そのうち約2300人が18歳もしくは20歳で社会に巣立ちます。しかし虐待が理由で退所後に家庭に戻れない児童が多く、彼らはまさしく誰に頼ることなく「独り立ち」をしなければなりません。

しかし一般的にこういった「社会的養護」の状況について、まだ理解度が低いと言われています。私たちは児童福祉や社会的養護についての理解が少しでも深まることを目指し、これからもコンパスナビ活動を通して、広く社会に呼びかけていきたいと考えています。

参考資料
厚生労働省 平成29年7月「社会的養護の現状について」