「ここからプロジェクト」ご紹介① 人に寄り添い、今ここからを!

インタビュー/特別寄稿

2017/07/05

子どもが抱える生きづらさは大人が作り出したもの・・・その思いで状況を変えるために立ち上がった大人たち

内閣府 子供の未来応援国民運動「子供の未来応援基金」が推進した「平成28年度未来応援ネットワーク事業」では、草の根で貧困の状況にある子ども達に寄り添った支援活動を行うNPO法人等を支援し、社会全体で子どもの貧困対策を進める環境、応援ネットワークを構築が大きく推進された。
全国から535件の申請があり、厳正な審査の結果、86団体が採択された。
ここで紹介する「ここからプロジェクト」は、「子ども食堂の開催と児童養護施設でのワークショップ」の事業が未来応援ネットワーク事業の対象とされて採択されたものである。代表である伊藤由宏さんにお話をお聞きした。

代表である伊藤由宏さんにお話をお聞きした。

「平成28年度未来応援ネットワーク事業」の採択団体は日本中から子どもの貧困等に真剣に取り組む585団体の申請があってそのうち採択されたのは86団体。名前をよく聞くビッグな団体ばかりの中にまだ運営方法さえおぼつかない自分の団体が入っているわけです」

採択されたら責任を果たさなければならない。
わたくしたち一般社団法人 青少年自助自立支援機構(コンパスナビ)も等しく同じ思いを抱いている。
伊藤由宏代表にお話をお聞きしたいと申し込んだら、フットワーク軽く、浦和駅近くの事務所に来所いただいた。伊藤代表は団体のリーダーとしてとても緊張していた。それが冒頭の言葉であった。しかし、穏やかにお話される中に熱を感じた。

ここからプロジェクトの活動内容」

●児童養護施設活動 絵本作りワークショップ
          ボクシングセッション開催

子ども食堂事業   みんなの食堂 5月25日(木)開催ブログ更新
               野方みんなの食堂 6月17日(土)開催ブログ更新

学習スペース提供  クローズドで無料塾に通う中学生に自習スペース提供&軽食提供

編集部:伊藤代表はどういういきさつで、現在のこの活動に至られたんですか。
伊藤:そうですね、ちょっと上手に話せないんですけれども、今40代前半でして、20代のときはずっとプロボクシングをしていました。
編集部:伊藤さんがボクシングやっていたんですか。
伊藤:そうです。実はもうプロじゃないんですけど、今も練習してその帰りに来ました。
20代でボクシングやり、やめてからちょっとがらっと方向性が変わりまして、心理カウンセラー学校に行ったり、あとコーチングを勉強したり、もう十何年前なんですけども、していた流れで、そこから仕事の傍らボランティアをするというのがそのころから少しずつ始まっていたんです。ひきこもりの人とか不登校の人とか、子どもが中心ですがサポートするサポート活動というのを2002年ぐらいにやっていました。というのがあって、そこが現在「ここからプロジェクト」の活動につながる一番最初のステップかなと思うんです。
そこからいろいろな、僕が今に至るまで仕事もしているので、その傍らのボランティアの活動でいろんな経験をしてきました。ひきこもり、不登校の人とかかわるということとか、児童養護施設にも行っているんです。その辺の活動であるとか、あと、今はちょっとやっていないんですけれども、一時期、渋谷でホームレスの方に声かけをしたりしてというのを、夜中、終電で入って朝までいるみたいなのをやっていました。
そういったことをしたり、あとは世田谷のほうで養育困難家庭という、いわゆる虐待のおそれがある家庭にヘルパーみたいな感じで入って、比較的愛情の足りない子たちだったりするので、施設に入っているとかではないんですけれども、そういった子たちと遊び相手をしたり、勉強を教えたり、食事を一緒にとったりという。大抵、そういった家庭というのは何らかでひとり親になっているんですが、お父さんかお母さんが一生懸命昼間働いて、夜遅くまで働いているというパターンが多いので、夜どうしても孤食になってしまうという、今の子ども食堂の流れかもしれないんですけども、それで一緒に、僕がごはんつくって一緒に子どもたちと食べる。実際に家庭に入って、というのを世田谷のほうでやっていたことがあったりですね。
あとは、プライベートな部分のことですが、僕はまだ未婚なんですが、10年ぐらい前におつき合いしていた方がかなり強烈な精神疾患を持っている方で、人格障害といって、毎日目の前で自傷行為があったりして、きつかったです。それと過食。そういったプライベートな体験も含めて、加えて現在の職業で、精神障害者の方とのかかわりというのもあったり、全体として人の生きづらさを見てきたというのがあるんです。そんな中で見ていくと、ホームレスの方でもそうなんですけども、やっぱり子どものころから生きづらさを抱えている。そこには虐待であるとか、いろいろありますけれども、抱えている人がいて、じゃあこういった生きづらい人たちを少しでも減らしていくためにどうするんだと。対症療法的な支援も大事だけれども、大人になって大変な状況にならないように、そのために子どものほうにアプローチしていって、現にもう子どもの時点で苦しいという子たちがたくさんいるんですけれども、子どものときにたくさんアプローチしていって、少しでも大人になってからしんどくならないようにというサポートできればいいなということをずっと考えていたんですね。
 それで、そんなこと考えているさなか、ちょっとまた別の話になるんですけれども、東北の震災があって、僕はちょっとした、何かしなければ的なというざっくりとした思いで、震災があって2年ぐらいたって、何かボランティア団体みたいなのに入って福島に行っていたんですけども、そこのボランティア団体が直接的な支援とあわせて、現地の児童養護施設にもかかわっていたんですよね。そこで僕に、何かアンテナが立ったというか。
編集部:ピッと。
伊藤:ここはしっかりやらなきゃというのがあって、それでボランティア団体の代表の方にも、私が段取りしますみたいな感じでやらせていただいてということがあったんですね。
現在、その施設との交流を一人で続けています。

ボクシングのご縁で、坂本博之さん(元日本・東洋太平洋ライト級チャンピオン、SRSボクシングジム会長)と出会い一緒に活動することに!

伊藤:実際にこれもまたボクシングつながりなんですが、児童養護施設出身の元ボクシングのチャンピオンの坂本博之さんがいて、子供の未来応援国民運動の発起人にもなっていらっしゃって、2016年1月の式典のときも前に座っていらしたんですけども、その方と僕は一緒にずっと活動しているんです。
編集部: そのときからなんですか。その福島に……。
伊藤:そうですね、その福島でボランティア団体としてかかわっているときに知り合ったんです。僕のほうから一方的にもう飛び込みでアポイントとらずにジムに行って、僕自身がずっとプロでボクシングやっていたというのもあって、ボクシングジムに行くことに抵抗なかったというのもあるんですけども。
編集部:普通の人は行けないですよね。
伊藤:それで、その坂本博之さんと僕の現役時代がかぶっていて、本当に憧れの存在だったので。
編集部:そうだったんですか。運命を感じたでしょう。
伊藤:そうですね。さっきもお会いしてきました。坂本さんは2007年に引退されてからずっと全国の施設を回られていて、ボクシングを通した交流をしていて、それを知っていたので、僕がボランティア活動の一環としてお呼びしようと思って、ジムに行ってお願いしますと言ったら、アポなしで飛び込んでいって怒られるかと思ったけども、もう快く引き受けてくださって、それで始まったというか。そこからその福島の施設には結構もう4、5回来てもらいましたかね。
ボクシングセッションを細く長く続けていこうとは思っているんです。もう3年目、4年目ぐらいになるので、毎年同じ顔の子もいて、1年間見なかったので、2016年の秋再会すると子どもの成長ってすごいなと思いました。
編集部:そうですよ。びっくりしたでしょう。でもちゃんと向こうは覚えていたでしょう。
伊藤:そうですね、みんな覚えていますね。
編集部:コンパス うれしいですね。
伊藤:そうですね。(ブログを見ながら)そうそう、そんな感じで。坂本さんはボクシングを通して交流というのと、ボクシング終わった後に坂本さんが子どもたちに人数分、駄菓子の詰め合わせみたいなのを持っていくんです。それでみんなで食べながら交流会をして、その中で坂本さんが15分ぐらい時間をとって、子どもたちの前でスピーチをして、それがまた熱いお話なんですよ。熱血ですね。
編集部:ビデオ(子供の未来応援国民運動より【動画】)を見ていると確かに熱血ですものね。

伊藤:そうですね。ただ、例えば僕なんかが同じこと言うのとは全くわけが違って、やっぱり坂本さんも小学校のときに児童養護施設で苦しい思いをされてきたんです。
坂本さんは食事の面でのネグレクトに遭っています。直接親からじゃないんですけどもね。
親が貧困で大変だからといって、親戚の家に預けてお母さんが一人で働いていらっしゃっている間に、その親戚から食事も与えられない、トイレにも行かせてもらえないという虐待に遭って、兄弟で。弟さんが栄養失調で倒れて児童相談所に預けられたというような流れがあるんです。坂本さんもそういう経験をされているので、そういった方から語られる言葉というのは、子どもたちにもう刺さり方が全然違うというか、同じセリフでも全然違うんですよね。幼稚園ぐらいの子からしたら言っていることよくわからないというのは確かなんですけれども、坂本さんがいつも言うのは、やっぱり大人に裏切られてきた子どもたちがほとんどだから、言っていることはわからないけども、何か僕たちに真剣に向き合ってくれている大人がいるぞというふうに、幼稚園、小学生低学年ぐらいの子たちが感じてもらえるだけでもいいって坂本さんはおっしゃっていて、ちょっと年が上な中学生、高校生ぐらいになってくると話もある程度理解できて、高校生ぐらいになると今までにも何人か泣きながら聞いている男の子とかいます。坂本さんとはとても良い活動をさせていただいていますね。

坂本博之さんのSRSボクシングセッション(児童養護施設での活動)【動画】

ブログ

みらいの森アンバサダー:坂本博之さんからのメッセージ【動画】

元プロボクサーで、日本および東洋太平洋ライト級チャンピオンでもある坂本博之氏。 児童養護施設で育った彼は、内に秘めた感情をボクシングに転換する方法を知っている人です。

この動画のなかでは坂本さんのボクシングセッションをサポートする伊藤さんの姿が。坂本さんのフックをミットで受けているが大丈夫かしらとハラハラしてしまった。

(次回は八王子の施設で絵本づくりをするお話を報告する)