ワーカーズコープ・センター事業団③ 実践事例集「このまちで歩んでいく 協同労働が開く自立支援」から

インタビュー/特別寄稿

2017/06/22

事例の中からいくつかをご紹介します

事業の数、量、規模ともに名実ともに福祉領域事業の雄であるワーカーズコープ・センター事業団の多岐に渡る事業のうちの、ほんの一部だが学ぶことができた訪問であった。
エッセンスは冊子のタイトルが示すごとく、「『共に働く』職場から地域づくりへ 協働労働が拓く自立支援」だということがすとんと腹に落ちていった。

もともと、サポステ利用者だった人が、地域が必要としている仕事を立ち上げたなどの3例を紹介したい。

「生活困窮家庭の子どもの学習支援と親の就労支援も一緒に解決していく」

扶蘓さんのお話を聞いて、まさにそのとおりだと膝を打った。

「生活保護受給者と生活困窮の家庭とに一体的に実施をしています。支援の実態としては生活保護の世帯の子どもさんたちのほうが多いんですけど、同じような問題意識として、やっぱり子どもの学習支援をしているとどう考えても世帯支援の必要性というのが出てきます。子どもに勉強を教えるだけではなくて、勉強できる家の環境だとか、親がなかなか子どもの学習をサポートするような環境になかったり、その余裕がなかったりというふうなことで、親支援の必要性というのが一方で出てきたり。逆にそれこそ社会的養護というところでいうと、家庭の機能が弱い子供たちだとか頼れる基盤がない子どもたちだとか、そういったことが学習支援を通じて見えてきたりするんですよね。なので親の就労支援もあわせて一緒にしていくというふうな取り組みがあったり、やっぱり子どもから見える家庭の問題だとか就労の問題だとか、そういったことはすごく感じるんです」。

学習支援を始めて サポステ利用者からスタッフに

北海道 苫小牧市 ワーカーズコープ日胆まちづくり地域福祉事業所 高田紀子さん
設立2010年 事業内容 若者支援、生活困窮者・成果保護受給者支援、児童センター、放課後等デイ

「私たちの組織のとても大きな目標としては、共に働く、共に生きる地域をつくるということなので、いろいろな制度事業の相談窓口から出会ういろいろな困難な状態にある人たちと何とか一緒に生きていくような地域をつくりたいということで、まずはやっぱり仲間として一緒に働こうということで受け入れたりずっとしてきているんですね」(扶蘓さん)。

扶蘓さんが次に紹介してくださったのは、

「この人はアルコール依存症だった人なんですけれども、その人が入退院を繰り返す中で、今は所長として清掃の仕事のリーダーです、その過程で何回か行きつ戻りつしながらでしたが、リーダーとして頑張っているんですよ」

燃え尽きるよりも アルコール依存症の僕が労協の清掃現場と出会ってから

東京都 豊島区 労協センター事業団東京事業本部 木下史郎さん

手記の全部は掲載できないが、アルコール依存症で38歳で仕事も妻も娘も失った彼が、どん底から立ちなおることができたのは仕事があったからだ
世の中の役に立てるんだと、自己肯定感を回復し、チームの仲間たちとのつながりに支えられ、仕事をしながら獲得していったものだ。

働き方を創る 可能性はまちづくり 若者支援から始まった小さな事業所の挑戦

労協センター事業団 但馬地域福祉事業所 上村俊雄所長

最後に、扶蘓さんが紹介してくださったのは、兵庫県豊岡市の事例だ。かつてゆきづまり死をも考えていたとは到底思えない優しい笑顔の所長である。

「サポステ事業は仕様上、制約もあるのですが、やはり地域のハブ的な存在というか、ニーズと出会うアンテナショップの位置づけだと思っています。だけどサポステ事業だけをしていては全く若者が生きていく、若者が自分たちの可能性とかこう生きたいというふうなものを実現していくということは全然不十分なので、やっぱりサポステ事業を活用しながら地域に居場所とか働く場をつくっていくということが私たちのそもそもの目的なんですね。なのでそれこそ企業ネットワークと結ぶだとか、紹介するのは豊岡というすごく田舎でそれこそあまり資源もないようなところなんです。ここにサポステを卒業した若者たちと職業訓練を兵庫県から受託をして新エネルギー環境コースというような名前だったかと思うんですけれども、林業と水力発電とBDFというこの三つのことを学ぶ職業訓練を実施して、その卒業生たちと一緒に森林、里山にかかわる事業を起したんです。本当にサポステの利用者のニーズと地域のニーズというのも組み合わせた形で職業訓練をして、その学びを仕事を起こすという形で役に立てたというふうな事例なんです。その地域地域でいろいろなやり方があるかと思うんですけれども、地域の困りごとと結んで仕事を起したり企業と結んだりということで地域をつくっていくというふうな支援をしています」。

「豊岡などには都市部のようないろいろな企業とか資源があるわけではないので、人口が減っていって若者が出ていって高齢者が、田んぼが荒れていって、耕作放棄地になっている。
そういう地域の中でやっぱり自分たちが働き続けられる仕事をつくりたいという若者の思いと、この荒れた畑なり山なりを何とかしたいというお年寄りの思いがあって、そこを結んで仕事をつくったというふうな感じです」。

これは、ぜひともこの目で見たい、話を聞かせていただきたい取り組みである。

私どもコンパスナビ(=一般社団法人青少年自助自立支援機構)は、若者たちの自立に向けて就労の支援をしていく、必要であれば自動車の運転免許の取得をサポートする事業をしている。

生い立ち、生育環境の苛酷さ、障がいや貧困で困難な状況にある子どもたち、若者たちを支援している各種団体がある。それぞれの得意なことで連携して、点が線に、面になって、安心で厚みのある支援が広がっていくようでありたいと考える。

事業の数、量、規模ともに名実ともに福祉領域事業の雄であるワーカーズコープ・センター事業団の多岐に渡る事業のうちの、ほんの一部だが学ぶことができた。

エッセンスは冊子のタイトルが示すごとく、「『共に働く』職場から地域づくりへ 協働労働が拓く自立支援」だということがすとんと腹に落ちていった。