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企業CSR活動紹介

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株式会社ハーベスの挑戦―

株式会社ハーベスが新設した奨学金とは

株式会社ハーベスが新設した奨学金とは、児童養護施設や里親のもとで暮らす子供が大学や専門学校に進学する際、4年間で最大750万円を援助するもので、入学金や授業料に加えて「生活援助金」も含まれている画期的なものだ。

代表取締役 前田 知憲氏

代表取締役 前田 知憲氏

1.はじまり


2012年さいたま市CSRチャレンジ企業の認証を受けた(株)ハーベスは、1988年創設の潤滑剤、フッ素加工品、天然水や化粧品などを取り扱う企業。2015年「ハーベス育英奨学金制度」をスタートさせた。埼玉県内に所在する児童養護施設及び里親等のもとで暮らす意欲と能力のある学生が、経済的な理由で学業をあきらめることなく、夢を追い求められるよう応援することを目的としている。

その「はじまり」は、代表取締役社長である前田知憲氏の個人的な児童養護施設への寄付だった。それを知った社員が当社のCSR活動として社内で募金活動を始めようと考えた。当社が取り扱う天然水は本社をはじめ各事業所、工場で社員が無料で自由に飲めるように設置されている。そこを一本飲むごとに10円寄付してください、という提案に社員が賛同、年間約20万円の寄付が集まるようになった。そこに会社から同額の金額を加え、現在埼玉県内の2か所の児童養護施設に寄付を始めて3年が経つ。社長の個人的な気持ちが企業CSR活動へと繋がり、そこから「ハーベス」のさらなる挑戦が始まった。

 

2.「奨学金」のあり方


今回インタビューに応えてくれたのは、総務部・購買部担当部長の徳永秀一朗氏。一度定年退職後、再任用されこの制度の専任となりCSR活動を統括している。

「埼玉県こども安全課」によると、埼玉県内の児童養護施設や里親のもとで生活する子どもたちは約1700人。このうち大学や専門学校へ進学する子どもは13.9%にとどまっている。どんなに学力があり学ぶ意欲があり、将来への夢があったとしても、こうした子どもたちにとっては住居や学費、生活費が壁となっている。徳永氏は「そういった子どもたちが、お金の心配をせずに4年間、しっかりと学び夢を実現できる、そういった制度を作ろう。そのために必要なことは何か、どういった制度が求められているのか、社長と相談しながら2年間様々な調査をしました」と語る。そこで見えてきたのは、現在「日本学生支援機構」が行っている国の貸与型の育英奨学金の課題。貸与型の奨学金は、子どもたちへの借金となり貧困を招いていると社会問題にもなっている。「給付型にすべき」との考えに至ったが、様々な民間などがおこなっている給付型奨学金を見たところ、全国規模にするとどうしても「広く、浅く」なってしまう。「我々のような中小企業では資金面で限られてきます。充分な支援を考えた時、1年に1名に限定、その代わり手厚い支援をするという結論に達しました」。この考え方に賛同した埼玉県子ども安全課の全面的支援・協力を得て創設。ハーベスの「給付型育英奨学金制度」は、入学金、年間授業料及び施設設備費、実験実習費用など。さらに自宅外通学者には年間 60 万円の生活援助金を給付するという手厚いものになった。一人当たりの給付額は全国最高水準となる。

しかし同時に、選考については厳しい審査がなされる。各施設長や里親からの推薦理由書、高校の成績証明書では高い評価が求められ、さらに本人の希望理由を問う小論文の提出。そして面接。単に優秀だというだけではなく、「どれだけ本気か、真面目にやってきたか、覚悟はあるか」が問われる。本当にやる気のある優秀な人材に充分な支援を、というのが考え方の基本になっている。

大学入学後も、厳しいチェックが行われる。成績証明書の提出が求められ、学部で1/3以上の成績を取ることが条件となる。もちろん遊んで講義をさぼるなどということは許されない。「大学に進むと友人も増えて、いろいろな遊びも覚えるでしょう。でも我々の奨学金は給付型、大学に遊びに行くためにお金を出しているわけではない」と言い切る。条件から外れたら、給付は打ち切りとなる。奨学生自身もその条件は充分に理解し、承諾書・誓約書も提出しているという。

 

 3.企業の責任と覚悟


こうして、2015年12月、いよいよ奨学生の一期生が誕生した。県内の児童養護施設で暮らす女子高校生に、前田社長より奨学金認証書が手渡され、翌年4月から進学する。目指すは保育士。幼児の頃から施設で育った彼女。幼稚園の時に温かく優しく接してくれた保育士さんにあこがれた。そして受けた愛情が、今の彼女の夢につながっている。「自分もあの保育士さんのようになりたい」。その思いは、高校の保育実習でより強くなったという。高校3年生でアルバイトを始め学費を貯めようとしたが思うようにはいかず諦めたことも。しかし、今、彼女はその「夢」に向かって歩みだすことが出来る。

徳永氏は語る。「9人の応募者がありましたが、その小論文を読むごとに涙が出ます。9人全員を支援したい気持ちになりました」。それくらい、どの子どもも切実に願い真剣だった、でも恵まれない環境にあった。けれども予算の関係上、一人に絞らなければならない、最後は社長判断だったという。

こうして選考された奨学生、「だから!」と徳永氏は続ける。「我々は、奨学金制度を立ち上げたものとして責任があります。奨学生として認定し支援すると約束したのです。だからどんなことがあっても、しっかりとこの子どもたちが4年を終えるまでは支援し続けなければならない責任があるのです。そのためにも会社の業績を落とすことはできない。今利益があるうちに、資金をプールしておいてでも、こちらの事情で支援を打ち切ることをしてはならないと、そのくらいの覚悟を持って臨んでいます」。毎年一人ずつ奨学生を認定すると、一期生が卒業までに総額約3000万円の資金が必要となる。これらの資金は、すべて会社の利益から出る。まずはしっかりと利益を上げること。また当然ながら社内での理解が不可欠だ。理解がなければ、利益が上がれば給与に反映してほしい、という声が上がるだろう。「そこのところは、きちんとこういう制度でやっているのでと説明して理解を得るようにしています。現在のところ批判はありませんし、それを出させてはならないと思っています」。

「募集の時に、施設長さんや里親さんにも、我々企業はこのような考えだということをしっかり伝え、自分たちは真剣に取り組み、支援します。だからそちらも真剣に取り組んでください、それが出来ないときには毅然とした態度を取りますと話します」。その姿勢。そこにはまた、一生懸命働いて利益を上げてくれている社員への気持も含まれている。奨学生にも厳しいものを求めるが、出す側にもこれだけの覚悟が必要なのだ。一見厳しすぎるようにも見えるが、それには、こうした取り組む側の並々ならぬ決意がある。

そしてまた、そこには人への深い愛情がある。

 

4.根底にあるもの


     ――それは人への優しさ、愛情


 企業CSR活動として、このように若者への支援を行う時、その根底に必要なものは何だろう。次世代を担う人材への投資、また福祉の観点から恵まれない人たちへの支援のためにという。しかしそこには「人への優しさ、愛情」が不可欠なのではないだろうか。ただ企業CSR活動をしなければならないからやパフォーマンスのような気持だけで続くようなものではない。続けるためには、それだけの覚悟が必要になる、その力になるもの。

徳永氏のお話には、奨学生に対し、企業人としての厳しさがある一方で、恵まれない環境にあっても真剣に生きようとする子どもたちの思いを感じる心、そして「この子どもたちを何とかしたい」という切実な思いが感じられた。それはこういった制度を続けていくこと、「生みの苦しみ」を経て誕生したこの制度を「育てていく」ことへの思いを語った時に出た「根底にあるのは、やはりそういった人たちへの愛情でしょうね」の一言に尽きるだろう。「子育てと同じなんです」と語る。子育てには、「愛情」と「厳しさ」が必要だ。ただ甘やかしたのでは、決して子どものためにはならない。時には厳しさに立ち向かわせることが必要だ。けれども決して見放さない、愛情を持って見守ること。「我々の支援には、そういったものがあります」と語る。

一期生の大学生活は、間もなく前期試験が終わり第一回目の報告の時が来る。成績証明書と後期の授業料納付書を持ってくるようにと言ってあるそうだ。近況報告を含めて話を聴き、書類を預かって今後の支援を決めるという。そう話しながらも「2月に会った時、イタリアン好き?と尋ねたら、好きと言っていましたから、ごちそうしようと思っています」という。「甘えていいところは甘えさせ、厳しく臨むところは厳しく」。

ハーベスの育英奨学金制度はスタートしたばかりだが、ここには本当の意味で子どもたちに必要な「愛情」というエッセンスが詰まっている。

(株)ハーベスは、国の進めるワークライフバランス(仕事と生活の調和)を目指しており、仕事と育児の両立を支援している。まさに「人」を大切にする企業といえるだろう。

HARVES.Co.,Ltd


株式会社ハーベス 育英奨学金

 

 

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