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「とにかく子どもを一人にしたくない」―居場所サポートの活動から

特定非営利活動法人「居場所サポート ロベ」(茨城県つくば市)

「平日は毎日、大学が終わったら来ます。土曜日は一日中来て、子どもたちと過ごしています。ここにいる時間がとても長いのですが、充実しています。夏からの新しい事業の中では、ただ勉強を見るということだけではなく、お話を聞く、悩みを聞いて相談にのるというような支援も出来たらと思っています。」と笑顔いっぱいに答えてくれたのは、スタッフの長谷川理恵さん(以下理恵さん)。現在、茨城大学農学部二年在学中。

理恵さんの幼い時からの夢は動物園の飼育員、また一緒に暮らす祖父母がお米農家ということもあって少しでも役に立てたらと、進学を決めた。そんな理恵さんと「ロべ」との出会いは、昨年(2015年)秋、母親の古い友人でもある理事長の森美智子さんと話をして、共感したことから始まる。12月に初めて訪問し、すっかり子どもたちと馴染み、ボランティアとしてスタート。「今年の4月からは正式にスタッフとして雇ってもらいました。経理や事務もやります!子どもたちの面倒も見ます!」と「ロべ」への情熱を語る。



 

「ロべ」のこと


入り口に貼ってあります
入り口に貼ってあります


 

「ロべ」とは、フィンランド語で「愛」。「キッズ、シニア、スタディサポート」の事業所として、2011年からスタート、経営理念は「愛、調和、感謝」。今夏から、新たな事業として「つくば学習塾」を始める。今、子どもの貧困や孤立、高齢者の暮らし方がいわれる中で、多世代の交流を軸に、垣根を超えた「居場所」作りを目指している。

理事長を務める森美智子さん(以下森理事長)は、昭和41年福岡県生まれ。平成16年の学習塾経営に始まり、教育産業に従事してすでに12年。学童保育の中での学習支援や公営の学童保育に入れない条件の子どもを優先して受け入れている。幼少期は、県営住宅に住み、精神疾患を持つ母親の入退院の繰り返しに伴い、自身は親戚の家に、妹は養護施設で過ごすなど不遇な時期を過ごすものの、小学校入学と同時に父親が起業、その後発展を続け年収10億の会社に成長した。「低所得世帯からの脱出は出来る!」ことを伝えたいと願う。

一方で、スタッフの理恵さんも、母子家庭で育った。外で忙しく働く母親の代わりになってくれたのは、同居する祖父母。一緒に田植えをしたり、祖母に連れられていろいろなところを出歩いたり。「近所の人とお話をしたり、可愛がってももらったりと、助けてもらいました。そんな経験から、人とコミュニケーションを取ることも出来るようになったかな」と語る。高校時代は、科学部で活躍。当時お台場で開かれていた「手作りウインドカー」の大会で3位入賞を果たしたこともある。そんな生い立ちを持つ理恵さんは今、「ロべ」に来る子どもたちにとっては「良きお姉さん」であり、森理事長にとっての頼もしいスタッフだ。

「ロべ」は、現在、月曜日から土曜日まで毎日。メンバーは小学校1年生15人程度、中高学年が5人程度という。共稼ぎ家庭が増える中、公的な学童保育では充分な受け入れが出来ていないのが現状。さらに、この地域はファミリー型の大型マンションが増え、それに伴い共稼ぎ世帯が増加し追い打ちをかけている。もともと学校の中に学童保育がない場合、あってもすでに定員を超えている、空のあるところは遠く送り迎えが大変、また3年生までは受け入れるが4年生以降は受け入れられないなど、それぞれに事情はあるものの、3月31日まで保育園に、4月1日から学童保育に子どもを預けたい保護者にとっては切実な問題だ。「ロべ」では、当初土曜日は受け入れていなかったが、共稼ぎ家庭からの希望で、あわせて学校休業日も対応している。近くの学校からは各自バスで、遠くからの子どもたちは「ロべ」が用意しているバスで迎えに行く。

いろんな人たちが寄付してくれたテーブル、形は不揃いでもいい
いろんな人たちが寄付してくれたテーブル、形は不揃いでもいい


お部屋の中
お部屋の中


決まりごと
決まりごと


「とにかく子どもを一人にしたくない」という思いから、様々なメニューを考えて、出来得る限りの対応をしているという。こういった手厚い対応は、子どもを預ける親にとっては安心でありがたい存在なのだろう。

 

「ロべ」には、いくつかの取り組みがある。


一つは「学習達成報告ノート」。筑波大学大学院の「幼児指導」を目指している院生が中心となって進めている学習指導。その日のノルマ、例えば1Pの宿題が出来たら達成率は100%、2ページ出来たら200%と上がっていく。7ページ頑張った子どもには「達成率700%」が記入される。これは、子どもたちにとって、学ぶことへの「やる気」を引き出す取り組みといえるだろう。またPCも設置されており、自分の興味のあることを発見できたり、他の子どもが見ているものから刺激を受けたりと効果的に使われている。

大変興味深い取り組みは「スクエアステップ」。「スクエアステップ」は、筑波大学大藏倫博先生をはじめ三重大学、長崎大学の3つのスポーツ医学や健康体力学、老年体力学を専門とする国立大学法人の3教員が連携して開発した、科学的エビデンスに基づくエクササイズ。高齢者の転倒予防・認知機能向上をはじめ、成人の生活習慣病予防、子どもの身体機能の発達、アスリートの競技力向上とコンディショニングにまで適用している(スクエアステップ協会資料参考)。森理事長も指導員資格を持ち、平成27年からは出張指導をするシニアサポートも行っている。

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このような施設の場合、保護者からのクレームはつきものだが、「ロべ」ではこれまで1件のみ。「協力してくださる親御さんが多いですね。使えそうなものを持ってきてくださったり、子どもたちもおもちゃ持ってきたよ、って寄付してくれたりします」とのこと。バザーの準備も進められており、ここでは子どもたち自身が売り子となり、売り上げでほしいおもちゃを買うなどするという。

このような現在の活動から、「ロべ」は今、新しい一歩を踏み出そうとしている。

 

新事業「つくば学習塾」


 

この事業は、貧困家庭の子どもたちを中心とした学習塾で、同時に食事支援も行おうとしている。つくば市で最も一人親世帯が多いと言われている谷田部地区で、まずは公民館を借りて夏休みの始まる7月19日スタートを目指している。森理事長は「お腹を空かせている子どもたちに勉強しよう、って言ってもこないですから、まずは食事、生活支援というところも交えてと思っています」と語る。公民館には調理施設がないため、おにぎりなどを作って子どもたちに提供する予定で、現在、ライオンズクラブから支援を受けられるような形になればと活動している。現在の「ロべ」でも、理恵さんの祖父母がされている米農家から「長谷川米」の提供を受けているが、「作ってきたおにぎりを、子どもたちが笑顔で食べてくれるのが嬉しい」と理恵さんは言う。

学習指導に関して森理事長は「筑波大学の学生を中心に、企業をリタイアされたシニアの方、研究職に携わっていた方がつくばにはたくさんおられるので、そういう方々の居場所にもなるような形を作っていけたらと思います」と語る。

地域の方が物心ともに支えてくれるのは理事長、スタッフの人柄か
地域の方が物心ともに支えてくれるのは理事長、スタッフの人柄か


「貧困家庭では、保護者が学校、勉強に興味がない、学校にいかなくてもかまわない、それよりは自分が生きていくことに意識が向いていて、食事も給食のみ、という子も多いのです。自宅学習できるような環境にない」。そんな子どもたちへの学習支援としては、まず、抜けてしまったところの穴埋めをしながら進めていくということ。例えば小学校5年生であっても必要なら小学校2年生の教科書を使うことがあってもいい。わからないままに進むのではなく、恥ずかしがらずに元に戻ることが大切と、森理事長は語る。理恵さんも「子どもたちは孤立してしまって、基礎学力も抜けてしまったりするんです。そこを戻ってあげて自信を持たせること。できるよ、すごいね、できたねっていうと、本人も出来る!と思ってやってくれるんです」と話してくれた。

森理事長の夢は、まだまだ続く。それは、子どもたち、シニア世代、そして障害を持った人たちも集える、垣根を超えた「居場所」作り。さらには殺処分になる動物(茨城県は殺処分の動物の数が多いと言われている)をも受け入れて、一人親や生活保護世帯で、動物を飼えない環境にある子どもたちがふれあえるようにしたいと考えている。「少し広い、子どもたちが走り回れるくらいの土地に、プレハブで良いので建物を建てた施設が作りたいのです。そのためには、やはり資金集めが必要」と語る森理事長。それに理恵さんが応える。「いろいろな人がいることで、こうしてあげようなど優しさも生まれてくると思います。不安なことがあっても一人で抱え込むのではなく、同じような境遇の人がいたり友達がいたりすると相談もできます。また上の子が下の子の面倒を見る、下の子は上の子を頼る、など人間関係も学べると思います」。森理事長の考えを理解し支える気持ちは、すでに出来上がっている。



 

 

多世代の、いろいろな人たちの思いがかなう、自分たちの存在価値が高められる場所。その実現に向けて、「ロべ」は進み続けるのだろう。そして、伝えたいことは一つ。どんな境遇にあっても、一生懸命に努力したら、必ずより良い未来があるということ。

笑顔のスタッフたちです
笑顔のスタッフたちです


「ロべ」は「愛」。森理事長と理恵さんの言葉や行動には、人への深い愛がある。

 

関係団体の連携


 

取材中、何度か話題になったのは、子どもたちに対する支援を行っている関係団体の連携だ。本会「コンパスナビ」と「ロべ」では、現在お互いが行っていることや行おうとしていることに共通点が多い。「居場所作り」や「学習支援」。そして「運転免許取得支援」については、すぐにでも連携を取ることが出来る。また、活動を進める上での悩みや問題点も共通している。こうした団体が、情報を共有し、互いに協力し支え合い、共に進むことが、今後、これらの事業が発展するための一つのカギとなるだろう。

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