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インタビュー/特別寄稿

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児童養護施設「18才の巣立ち」

トラブルはひとりで悩まないで
誰かに相談して早く心を軽くして

 児童養護施設では原則として18才で巣立つ。そのあとは自立した生活を余儀なくされる。集団の生活からひとりの生活へ。楽しいことがある反面、戸惑い、迷い、悩み、がんばっても心が折れてしまうことも経験するだろう。そんなとき、どうしたらいいかを一緒に考えてみよう。

輝いていたはずの未来がブルーに


「実は新生活でうまくいってなくていろいろ悩んでいて・・・」と連絡をくれたMさんのことを紹介したい。

児童養護施設から巣立ったのが平成27年3月。

作家になることを目指して、クラウドファンディングを活用して知恵と努力で専門学校への進学の道を切り開いた。そして専門学校在学中にプロ作家としてデビューすることができた。

その経緯は、コンパスナビサイトでも紹介した。

自立への道—「住居と仕事に恵まれて、自立して夢を追い続けられる私たちは運がいい」
高校生に発信したサイト「ナビ部」でもカゼハレさんが作家デビューしたことを紹介した。

専門学校を卒業した今年春のタイミングで、学生向けのシェアハウスを出て、いろいろな年齢層の女性たちが住む別のシェアハウスに転居したばかりだ。

学生の身分からプロの作家一本で食べて行く決心をした輝かしいスタート。住まいも替わり、環境の大きな変化があったところで、コンパスナビのメンバーは皆、楽しい近況報告でも聞けると思っていた矢先の冒頭の連絡であった。
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はじめての仕事がうまくいかない


Mさんに会ってみると、元来朗らかな彼女の表情が暗く、体もほっそりしている。食事をしながら話しているのだが、彼女の箸が進まない。それでもポツリポツリと語り始めた。

作家としてのスタートで、担当編集者との付き合い方がギクシャクしているという。作品のスケジュール管理から、ストーリー展開の相談まで、作品が仕上がるまでの全般を担当してくれるのが編集者の役割だ。作家志望者が最初に出会う「仕事の窓口」ともいえる編集者との付き合い方が、作家としてはいちばん気になるところだ。「人物の描写はわかりやすいか」とか「いつまでの締め切りまでに書いて」と、作家と二人三脚で作品を世の中に生み出していく。

「私からの報告、連絡、相談のいわゆる“ホウレンソウ”ができないのが悪いのだと思いつつも“私がこの作品を書いて良いのだろうか”“気に入られていないのではないか”」などと、疑心暗鬼に苛まれているのだという。

Mさんは、自身に軽度の発達障害があるかもしれないと言い、対人関係に自信がない。少しでもきつい調子でいわれると、それだけで引いてしまう傾向があるのだと自覚している。だから、余計気後れして、自分だけでくよくよしてしまうらしい。

でも考えてみれば、担当してくれる編集者との関係はまだ始まったばかりで、これから仕事を通してお互いを理解していく時期なのだ。連絡は主にメールのやりとり。声や表情などが見えないから画面の文面だけで、どんな感情をもって書いたかを推測するのは難しい。直接会って話すか、せめて電話で会話して、わからないことは聞いた方がいいとアドバイスしたのである。素直なMさんは翌日お話できて誤解がすっかり氷解したとのことだった。

シェアハウスでの派閥争いに巻き込まれて


もうひとつの問題が、引っ越したばかりのシェアハウスの人間関係。シェアハウスには40代以上の女性たちが居住している。そこへ20代のMさんが入居して、雰囲気が微妙だと感じた。なにやら派閥ができているようで、新参者の彼女を自分の味方に取り込もうとメンバー間であれこれあるらしい。Mさんは彼女なりに、その人たちのことは客観的に見えているので、渦中に取り込まれないようにしているが、それも心の負担になっているようだった。しかし、この件に関しては解決策を自分なりに考えているようで、上手にふるまうことができそうなので、これは静観することにする。

施設出身者が持つ「もやもや」の正体


Mさんとさらに話し込むと、近頃、心の中がもやもやしていた、なぜそんな気持ちになるのかわからなかったと言う。

「私は18才で施設を巣立ち、女性専用のブリッジフォースマイルのシェアハウスに住んで専門学校に通いました。そこは施設出身者を積極的に受け入れてくれたシェアハウスだったので、居住している人と気楽に話すことができました。それが、専門学校を卒業して別のシェアハウスに移ってみると、新しい人間関係の中に入るというのは気をつかうものですね。集団生活が基本だった施設出身者は、個人が単位の社会生活のなかでは自分で自分を施設出身というワクに縛ってしまうのです。自意識が肥大化して自分からバリアを作ってしまうようなこともあります。私はそんなときに、仕事のトラブルも重なって負のスパイラルに陥っていきました。生い立ちの困難さは施設を出てから意識させられます。

同じ施設から巣立って社会に出た仲間も、もうすでに何人か就職につまづいてしまっています。学校というユートピアと違い、就職すれば誰もが現実と向き合うことを余儀なくされます。それは誰もが経験することなのですが、『私は一般家庭で育ったみんなとは違うのだ』というカラを勝手にかぶって、自ら退場してしまうのかもしれません。そこを踏ん張ってみると、次のステップが現れるのに、惜しいといわれますが、当事者になるとわからなくなるのです。

繰り返しますが、『施設出身である私』という意識が強くなってしまうのです。

私の仕事は会社勤務ではないし、自分との戦いです。この半年、考えて、考えて、ずっと考えてわかってきたことがあります。それは、仕事に自信を持てれば、仕事が私を助けてくれ、困難さは解消されるだろうということです。

私はこの頃、書く仕事をすることを次のように考えるようになってきました。
『社会と繋がり、対人関係について学んだり貢献感を得ること』、
『人間らしい生活を送れて、外の世界を知ったり自分のやりたいことを探す上で、ありのままの自分で挑戦し失敗するために経済的な土台を持つこと』。

そう語るMさんの内面の成長を頼もしく感じた。考えて考えて考え抜いたら、見えてくるものがきっとある。

それから、Mさんには一つ違いの兄がいる。寮住まいで大学の夜間の部に通いながら、学業と仕事の両立に頑張っている。日々の奮闘を互いに思いやりながら励まし合っているということだ。

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悩みを乗り越えて前進するために


悩みのない人生はないけれど、若くして自立しなければならない施設出身者にとって、相談できる人を持つことはとっても大切。

身近に悩みに向き合ってくれる人がいるだろうか。長年お世話になった児童養護施設のスタッフや、学校の友だちや、ありのままの自分をみてくれる人が相談にのってくれたら最適だろう。自分をわかってくれる人がいるというのはその存在だけでも支えとなるだろう。

また、悩みが深みにはまらないうちに相談できたらいい。ひとりで考えていると、同じ思考回路をいつまでもぐるぐる回っている。自分ひとりで悩み抱え込まないで、早めに言葉にしてみよう。

また、早めに解決できるようにと相反するようだけれど、悩みができたときは自分ではどうしたいのかを徹底的に考えよう。自分自身に向き合うことで、やりたいことや向かいたい方向もだんだん見えてくるようになる。

 

コンパスナビでは就労の相談にも乗っています


児童養護施設、里親、ファミリーホームなどを巣立って一度は仕事に就いたけれど、さまざまな事情で離職して、不安定な就労や失業中だったら、コンパスナビに相談して下さい。

必要であれば、巣立ちに役立つ運転免許取得や、住宅支援も行っています。そういう若者が身近にいる場合も相談に乗っています。

さまざまな情報がありますので、困ったときは連絡をください。希望を持って生きていく応援をしていきます。

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